|
テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:韓国映画
みんな死ぬ。生きていれば、かならず。 世の中便利になっても、自然界の掟には従うしかない。 淡々と、当然のことを捉えた素朴なヒューマン・ドキュメンタリーに、原初の暮らしぶりが、静かに語りかけてくる。 30年も生きた老いぼれ牛に、死期は近づいている。 めっきり頭痛がひどく、野良仕事もままならないお爺さんにも、嫁いで60年間、苦労しっぱなしだったお婆さんにも、死はもうすぐそこに迫っている。 そこには、なにも特別なことなどなく、ただただ別れがあるだけ。 文明の利器に頼らないで働いてきたお爺さんにとって、牛は朋輩。 となりの畑は、やれ耕運機だ、田植え機だ、農薬だと、とにかく便利な世の中になっているのに、それらを頑なに拒絶して、むかしのやり方を貫いてきた。 一概にすばらしい―と言えないのは、その手間と苦労が、一手にお婆さんにのしかかっているから。 「わたしほど苦労している者はいないよ。」「なんであんたなんかに嫁いでしまったんだろう・・・。」 どんなに愚痴をこぼしても無反応なじいさんをよそに、腰の曲がったばあさんは、野良仕事を続ける。 代わりの新しい牛がやってきても、老いた朋輩を手放そうとはしない。 死にかけた相棒を最期までこき使うじいさんが、あまりにも頑固だったが、お互い死に近づいた者同士、とことんまで擦り切れて草臥れて生を保っている様子が、胸に堪えた。 農村部の姿は、韓国も日本も変わらないんだなぁ。 頑固なじいさんも、そのせいで苦労するおばあさんも、ありがちで、変わらない。 なにも大仰なことではなく、この上ないほど素朴に生きる人たちの暮らしを垣間見るとき、文明社会のぬるま湯に浸るわたしたちの上にも、その摂理なるものがたしかに存在していることに気がされて、ハッとしてしまうのかもしれない。 監督・脚本・編集/ イ・チュンニョル (カラー/78分/OLD PARTNER) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[韓国映画] カテゴリの最新記事
|