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2010.10.24
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カテゴリ:アメリカ映画

 ファッション界を代表するデザイナー、トム・フォードによる初監督作品。
ブランドものには興味がないので、まったくというほど氏に対する世間の評価はわからないけれども、映画の出来不出来をいえば、なかなか見事でコンパクトにまとめられた良作だと思う。
審美眼があるというのは、それだけで武器なのだ。
シーンごとに、こだわりを感じる絵になるショットがあり、そこにドラマがあり、自身も同性愛者であるというトム・フォードの、真摯な想いが表れているようだった。


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 1962年、ロサンゼルス。大学教授のジョージは、16年間共に暮らしたパートナー、ジムを交通事故でなくして以来、8ヶ月も悲嘆に暮れていた。そして今日、その悲しみを断ち切り、人生に終止符を打とうと決意する―――。


 人生最期の日、それはきっと、なにもかもが特別に映るにちがいない。
ジョージのように、終わりにしたいと絶えず願っていたとしても、人生はきっと、いざとなれば愛おしく去りがたい

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身の回りを整理して、最期を迎える準備を整えたジョージが、かつての恋人チャーリー(ムーア)に会いにいく件がとても印象深かった。すでに女性を愛することはできないけれど、いまでは大切な親友となったチャーリーと、共に重ねる会話やダンスや思い出話が、かけがえないひと時を紡いでいく。
そして、帰宅したジョージがいよいよ死の準備を終えるころ、以前から気にかけていた教え子ケニー(ホルト)が、突然彼を訪ねて来るのだった。

思惑どおりに死ねないジョージの戸惑いと、生への執着を体現するのは、教え子ケニーの若々しい生命力や、その肉体。否応なしにケニーに惹かれていく自分と、死ぬ決意をしていたはずの自分が葛藤する様を、イギリスの名優コリン・ファースが見事に演じている。
かつての恋人チャーリーを演じるジュリアン・ムーアもまた、存在感素晴らしく、本編に魅力を加味していく。

人生の終わりを自覚した者にとって、きっと世界そのものが素晴らしい。どんな喪失感を味わっていても、いま生きて見つめている景色は無二のものなのだ。死ねば意味をなさなくなるのが世界。
それに気が付いてから死んでいったジョージは、幸せといえるのではないだろうか。自殺よりも、よほど幸せな最期であったろう。
生きていることこそ素晴らしい!そんな人生賛歌だと信じたい、奇麗に纏められた小品。トム・フォード氏自身の人生観を感じる、処女作とは思えない巧みな良作だった。



†   †   †



監督/ トム・フォード
製作/ トム・フォード  アンドリュー・ミアノ  ロバート・サレルノ  クリス・ワイツ
原作/ クリストファー・イシャーウッド
脚本/ トム・フォード  デヴィッド・スケアス
撮影/ エドゥアルド・グラウ
音楽/ アベル・コジェニオウスキ
出演/ コリン・ファース  ジュリアン・ムーア  マシュー・グード   ニコラス・ホルト

(カラー/101分/A SINGLE MAN)







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Last updated  2010.10.24 23:01:53
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