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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:フランス映画
80歳を越えて、なお活躍を続けるアニエス・ヴァルダによる、シネマ・エッセイ。 ヴァルダは、1928年ベルギー生まれ、フランスに移住後、写真家、映画監督として活躍を続けてきた人。 生い立ち、家族、友人、亡き夫ジャック・ドゥミとの思い出―――心象風景を交えながら、過去と現在を繋ぐドキュメンタリーには、彼女の人生を語る上で欠かせない美しい浜辺の記憶が散りばめられている。 ヴァルダ個人の回想に留まらない、時代ごとに変化してきたフランスの歴史であったり、第二次世界大戦、ヌーヴェル・ヴァーグ、女性の社会進出など、幅広く<映画>の枠を超えた現代史まで語られている。そのわりには、作風と構成はいたって軽妙。 キュートでユーモラスな人の魅力が、娯楽作品とも芸術作品ともいえる私的ドキュメンタリーをステキに仕上げていた。 個性あるセットが最後まで目を楽しませてくれる、その審美眼の素晴らしきこと。 ちなみにアニエス・ヴァルダの監督した映画は、作中にも登場していた『落穂拾い』(2000年製作)がとても有名。 『死ぬまでに観たい映画1001本』に選ばれているドキュメンタリーだ。 道路に落ちているものを拾う貧しい人たちを目にして、ミレーの名画『落穂拾い』を連想したヴァルダが、フランス各地の“現代の落穂拾い”を探し旅に出たロードムービー。独特の文明批判とユーモアとエスプリに富んでいるという。 ほかに挿入されていた、過去のモノクロ映画のほうは、残念ながらあまりピンとこなかった。 ヴァルダ最愛の夫といえば、『シェルブールの雨傘』が有名な、フランス人監督ジャック・ドゥミ。彼も多く登場している。 ドゥミはもう20年も前に他界しているので、当然、生前の画像なのだけれどとても瑞々しい。 恋しそうに思い出話をするヴァルダの姿は、寂しそうであり、幸せそうであった。 表現者同士が愛し合って一緒に暮らすとは、なんてステキだろう! ふたりでいればアイディアも相乗効果、語らいも尽きなかったのではないだろうか。 息子や娘に恵まれて、いまではたくさんの孫に囲まれて、80歳を越えてなお輝いているアニエス・ヴァルダを見ていると、もっと長生きしてほしいと願ってしまう。 そして、こんなふうに幸せなら、長生きするのも悪くないなぁと、思えてくる。 自ら手漕ぎボートを操り、巨大なオブジェを作成し、見る者の心を掴む映像を撮る、こんな元気なおばあちゃんが、果たして世界に何人いるというのか。 家族や友人たちに囲まれ、海を愛し、好きなことだけ続ける幸せ。 凡人のわたしなら、どんな風に生きれば、こんなおばあちゃんになれるものか、老いたとき幸せであるように今なにをしようか、そっと物思いに耽りたくなる、そんな作品だった。 撮影/ エレーヌ・ルヴァール アーレン・ネルソン 音楽/ ジョアンナ・ブルゾヴィッチ ステファン・ヴィラール 出演/ アニエス・ヴァルダ ジャック・ドゥミ (カラー/113分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.11.09 10:07:16
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