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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:フランス映画
全編スチール・カットと、ナレーションのみで描く、SF映画の異色作。 人類の99パーセントが死滅した未来。生き残り地底人となった科学者たちは、第三次世界大戦で荒廃する前の世界へタイムトラベルし、未来を救う術を求めている。 ある時ついに、ひとりの捕虜が時空を超えることに成功した。男は見覚えのある女性と知り合い、彼女と行動を共にして、任務を遂行していくのだが――。 幼いころに見た記憶の断片が、大きな伏線となっていく。飛行場の送迎デッキ、そこで銃殺されるひとりの男。 彼が生きた過去は、彼の記憶のなかにある確かなリアルで、子ども時みたあの怖ろしい光景はまさしく自分の死なのだった。 主人公の過去への望郷の念、まだ破壊される前のパリの街、人類、そして恋した女性。 地下に潜む未来では、過去の地球は美しく、すでに失われてしまったことの切なさがそこはかとなく感じられる。 モノクロのスチールのみ、あとはナレーションのわずか29分のドラマ。それぞれのスチールはとても儚く美しいとはいえ、30分も続くころには退屈さを覚えてしまうけれど、ただの動画ではこんな濃厚なムードは出ない。佳作といわれる所以がよくわかる。 ワンシーンだけ動画の場面があるので、静止画の連続とおもって油断しているとうっかり通り過ぎてしまうかもしれない。深い印象を残すための仕掛けがまた乙だった。 好きな映画、ギリアム監督の『12モンキーズ』(1995年製作)はこちらを元ネタとしている。すいぶんエンタテイメント性が増して、物語が膨らんでいたが、たしかに本作が原点となっとく。 デジャブが確実にあるべきラストシーンへと終結されていく展開はかなり秀逸だ。 監督・脚本/ クリス・マルケル 製作/ アナトール・ドーマン 音楽/ トレヴァー・ダンカン 出演/ エレーヌ・シャトラン ジャック・ルドー ダフォ・アニシ (モノクロ/LA JETEE/29min) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.12.29 17:45:09
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