趣味のある人生はいい。
何気なくやってきことが、追い追い生きがいになったりすることを思うと、なるべくたくさん
持っていたいものだと思う。
わたしは趣味と呼べるもの、映画と雑貨と読書しかないけれど、、老後ははたして大丈夫
だろうか(笑)
本編は、スイスの小さな村、夫を亡くした悲しみからなかなか立ち直れずにいたおばあ
ちゃんマルタが、若い頃の夢を叶え、ランジェリーショップをオープンするまでの物語――。
シルクやレースをたっぷりあしらった下着は、ほんとうに可愛らしい。すべて手作り、
手縫いの刺繍がステキだった。
しかし、保守的な村では、破廉恥極まりないと責められるばかり。心ない噂や嫌がらせで、
なかなか思うように売れない。
内緒にしていた息子に店のことがばれると、強制的にランジェリーはゴミ捨て場へと抹殺さ
れてしまう・・・。
とはいえ、村の牧師である息子だって、隠れて不倫を続けているただの人間くさい男。村の
誰もが同じように描かれているから、なにげに微笑ましい。
アメリカ帰りの親友リージと共に、めげずに店を守り続けるマルタに、それぞれ家庭の事情
を抱える友人たちも賛同して、いつしかおばあちゃんパワー全開の様相となる。
ランジェリーショップは、抑圧して生きてきた彼女たちの、遅れてきた青春、希望の星なのだ
った。
バイタリティに感嘆して、女の長生きに納得してしまうこと請け合い。やっぱり女性は強い!
パソコン教室でネットショップを開くと、とんとん拍子で商品は売れ始めて、マルタの手が足り
なくなり、村の老人施設にある刺繍クラブのお年寄りたちまで駆り出されて、なんちゃって村
おこしのような展開になっていくのも、愉快爽快だった。
ヨーロッパでは、お年寄りを主人公にした、ほのぼのとユーモアある作品が多く作られている
ような気がする。(または第二の人生を歩む物語)
ここで書いたうちでも、『ホルテンさんのはじめての冒険』『人生に乾杯!』、ドキュメンタリーの
『アニエスの浜辺』、『ヴィーナス』などもそうだった。
お年寄りが幸せに、こころ豊かに暮らしていける社会が、ヨーロッパには浸透しているというこ
となんだろう。
日本はといえば、そんな作品は数が少ないように思われて、寂しげ。
80歳になるマルタをはじめ、お年寄りのすごく輝いている心温まる小品だった。
監督は長編2作目となるスイスの新鋭女流監督、ベティナ・オベルリ。ちなみに、このブログで
スイス映画を書くのは初めて。
† † †
原案・監督 ベティナ・オベルリ
脚本 ザビーヌ・ポッホハンマー
撮影 ステファン・クティ
音楽 リュク・ツィマーマン
出演 シュテファニー・グラーザー ハイジ・マリア・グレスナー
アンネマリー・デューリンガー モニカ・グブザー
(カラー/89分)