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2011.09.17
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カテゴリ:ドイツ映画

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 第二次世界大戦中、ナチスによって行われた、英米経済の混乱を企図する贋札作り"ベルンハルト作戦"を描く。
作戦の裏に、偽造を強制されたユダヤ人技術者の真実のドラマがあって、偽造に従事していた生存者アドルフ・ブルガーの自伝が元ネタとなっている。
ザクセンハウゼン強制収容所で行われていた驚きの史実を、わたしはこれまで知らなかった。


 世界的贋作師サリー(マルコヴィクス)は、強制収容所にありながら破格の待遇をうけていた。彼だけではなく、贋札作りに従事するユダヤ系技術者たちはみな、家族と引き離されてよりマシな環境に生きていた。
罪悪感に押しつぶされそうになりながら、彼らはナチス・ドイツの悪行に荷担する形で、贋札の偽造に励む。追い詰められていく技術者たちの苦しみを描いていく。

物語は主人公のサリーが回想する場面から始まっている。カジノで豪遊する彼の脳裏に、強制収容所での日々の情景が浮かんでくる。それは後ろ暗い過去と死を覚悟した過酷な思い出だった――。


命令に逆らえば、いつ殺されてもおかしくない状況下。そうだとしても、家族や同胞たちはもっと死に瀕している。ぎりぎりのところ。
ナチスの言いなりになることを拒んだレジスタンスの印刷技師ブルガー(ディール)は、ひとりサボタージュすることを選ぶのだが、完成を極限まで遅らせる命懸けの行為は、直接仲間の命を危険に晒して、彼らの反撥までかってしまうのだった。

その中で、主人公サリーはマジメでも狡猾でもない、ただその場をどうにかして生き抜こうとしている、奇妙な男だった。
馬面で鼻が左に曲がっていて、ひと癖ある俳優カール・マルコヴィクスの、おどおどとした演技が大げさに思える場面もあったけれど、すごい存在感だ。ブルガー役のアウグスト・ディールもいい味を出している。 
時に浅ましくても、極限状況に置かれては、サリーの振る舞いを誰にも責められない。ともすれば立派だったのかもしれない身の置き方。ブルガーはじめ、幾人もの命を助けたことは事実なのだ。
けれども、突如戦争が終結して、ナチスが逃げ去ったあと・・・・贋札工場は天国のようであったし、卑怯であったと罵られておかしくない立場にあることを痛感させられてしまう。。
ボロに身を包んだ瀕死の同胞たちを前に、技術者たちがなにを想うのか・・・死を恐れず抵抗したブルガーが涙を流してなにを想うのか・・・その時自分がどんな人間であったか・・・胸が痛む結末となっている。


おなじ年に製作された『わが教え子、ヒトラー』と違って、ずっとシリアスな作品だった。どちらかといえば、ホロコーストものを問わず史実を描いた真摯な作品は、ユーモアを交えてあるほうが好きだ。観る側はとっかかりやすいし、存外ちゃんと胸に迫ってくる。
しっかり目を見開いて観たいドキュメンタリーもあって、たとえば『SHOAH ショア』がそうなのだけれど、いつ見られるだろう。『夜と霧』もドキュメのなかでもとてもよかった。


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   監督・脚本  ステファン・ルツォヴィツキー
   原作  アドルフ・ブルガー 『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』  
   音楽  マリウス・ルーランド
   出演  カール・マルコヴィクス  アウグスト・ディール  デーヴィト・シュトリーゾフ

   (カラー/96min/DIE FALSCHER/ドイツ=オーストリア合作)






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Last updated  2011.09.19 17:26:21
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