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行きかふ人も又

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2011.02.11
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カテゴリ:ドイツ映画

 類いまれなピアノの才能を持ちながら、殺人犯として収監され、刑務所の中でも手のつけられない問題児となったジェニー。彼女の才能に惚れ込み、残り少ない人生を懸ける老教師トラウデ、2人の魂のぶつかり合いを衝撃的に描く――。


 ジェニーだけでなく、トラウデに芸術を学ぶ看守と、トラウデ自身、三つの人生が変わっていく。 
ナチスの台頭する時代、軍事病院だったこの場所で、看護婦として働いていたトラウデ。当時の辛い過去を綴る回想シーンを縦糸に、それぞれの現在進行形の苦しみが力強く描かれていた。

「音楽しか愛せない」そう話すトラウデには、隠したい秘密がある。それは彼女が同性愛者であるという事実。
受刑者となったジェニーにも、辛すぎる過去があり、それぞれに背負った苦しみから解放されるには、問題に真向からぶつかることが、なにより必要のようだった。
年齢の差こそあれ、ふたりに共通する音楽ピアノの才能。言葉以上に雄弁に心を語るのに、芸術は頼れる媒体となっていく。

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激しく痛む傷に塩をもみこみ、相手の為より目的のためだったとしても、狡猾さを隠さない。血の出るほど過酷で真剣なぶつかり合いを繰り返していても、結局はお互いそれによって相手を救っている。
同性愛者であるトラウデに、ジェニーに対する特別な感情が芽生えたかどうかは、最後までわからなかった。

ふたりに起こった過去はツライ。でも、長く孤独に生きてきたトラウデは言う。
「才能を持って生まれた者の使命は?」と。彼女の使命は、自国の悲劇的な時代を生き抜くことだった。使命をまっとうする=普遍的なテーマ性がある。


平凡なわたしには、看守の変化が、もっとも身近だった。凶暴なジェニーに半死半生の怪我を負わされてから、温厚に見えたはずの彼は、殺したいほど彼女を憎んでしまう。そんな自分の感情と向き合い、トラウデの真摯な姿に触れて、少しずつジェニーを赦していった看守の、人間としての成長が、暗い物語にほのかな光を添えてくれる。

 如才ない作品とまでは言えないけれど、落ち着いた見事な小品だった。
全編に流れる様々なピアノ曲と、ジェニーの壮絶な演奏シーンはなるほど圧巻。あんな弾き方には、賛否両論あるかもしれないが、生き様の表れた魂を感じる名場面だと手放しで心奪われた。


†   †   †


監督・脚本/ クリス・クラウス
撮影/ ユーディット・カウフマン
音楽/ アネッテ・フォックス
出演/ モニカ・ブライブトロイ  ハンナー・ヘルツシュプルング  スヴェン・ピッピッヒ

(カラー/115分)





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Last updated  2011.02.11 18:06:58
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