乳癌に対するトラスツズマブは費用効果が高いという研究結果
乳癌に対するトラスツズマブは費用効果が高いという研究結果
提供:Medscape
1年間のトラスツズマブ治療は、10-15年前の典型的な乳癌患
者の平均生涯費用よりも高額であるが、この知見にもかかわら
ず、研究者らは、この薬剤を依然として費用効果が高い薬剤と
評し、サヨナラホームランものだとしている。
Allison Gandey
Medscape Medical News
【3月14日】2つの新しい研究によれば、乳癌再発リスクの約2
分の1の減少というかつてない減少幅は、トラスツズマブ(商
品名ハーセプチン、Genentech社)による高額な治療費よりも
重要であるという。1年間のトラスツズマブ治療は、10-15年前
の典型的な乳癌患者の平均生涯費用よりも高額である。しかし
、この莫大な増加にもかかわらず、研究者らは、ヒト上皮成長
因子受容体2(HER2)陽性乳癌に対するトラスツズマブは費用
効果が高いと評している。
この研究の結果は、『Journal of Clinical Oncology』2月20
日号に掲載されている。
付随論説において、「トラスツズマブ補助療法は費用効果が高
いという主要な結論は、トラスツズマブを素早く採用した米国
の腫瘍専門医にとって望外の喜びであろう」と、バージニア州
立大学Massey Cancer Center(リッチモンド)のBruce Hillner,
MD
およびThomas Smith, MDは記している。トラスツズマブ補助療
法は、2006年にオーストラリアおよび英国においても承認され
た。2005年初頭-2006年半ばまでの米国におけるトラスツズマ
ブの販売の伸び率は250%で、1年当たり7億5000万ドルに相当す
る。年間売上高の絶対増加額は、新規リンパ節陽性HER2陽性乳
癌患者全員の治療費と推定される。
「特に、主に公的(米国立癌研究所:NCI)資金を用いて、使
用を裏付けるエビデンスを得た場合、容認できる費用対効果比
を新しい治療の価格を正当化するものとしてとらえてはならな
い」と、論説委員は強調している。バイオ産業が社会的および
道義的に責任ある行動をとっているか否かについて引き続き議
論すべきである、と同氏らは指摘している。また、トラスツズ
マブ補助療法に使用する資金は、増税、劇的な自己負担金の増
額、使用の制限なしに、他の治療や他の医療に使用できない、
と同氏らは指摘している。
しかし、これらの懸念にもかかわらず、2つの新しい研究で、
主要な結論として、トラスツズマブ補助療法によって長期生存
期間が1年以上延長することが期待される、トラスツズマブの
心毒性は長期結果にはほとんど影響を及ぼさない、規範症例に
おける費用対効果比は他の広く受け入れられている治療とほぼ
同等またはそれ未満であるという同じ結論が出ている。これら
の研究では、トラスツズマブによる高額な治療費は大きな効果
があるので正当と認められると結論づけられている。
「我々の意見では、過去20年間でサヨナラホームランものの癌
治療薬や癌治療法は、イマチニブとトラスツズマブの2種類し
かない。これら2種類の薬剤では、従来の治療法で最良のもの
と比較して50%を上回る相対的減少が認められた」と、論説委
員は記している。しかし、費用効果の評価を有用性および医療
費の使用・配分の決定においてさらに重視しなければ、次世代
の社会を破産させてしまうであろう、と同氏らは指摘している
。
トラスツズマブの効果持続期間および全身再発の年間リスクの
相違
これら2つの研究は、トラスツズマブの製造元から資金提供を
受けずに行われた。両研究において、National Surgical
Adjuvant Breast and Bowel Project B-31
試験およびNorth Central Cancer Treatment Group N9831試験
の登録基準と同様のリンパ節陽性HER2陽性乳癌女性の仮定コホ
ートの長期自然史を追跡するために、マルコフモデルが用いら
れた。論説委員によれば、両研究チームとも、社会的な観点か
らとらえるよう試みたが、直接医療費だけが考慮されたので、
実際には健康保険会社の観点からとらえたものであるという。
これら2つの研究では、トラスツズマブの効果持続期間および
全身再発の年間リスクの2つの重要な点について相違がみられ
た。Azienda Ospedaliera della Provincia di Pavia, Ospedale
Civile
(イタリア)のNicola Lucio Liberato, MDらによる研究では
、トラスツズマブの効果は5年間だけ持続すると考えられた。
この概念は、Early Breast Cancer Trialists' Meta-Analysis
によって十分に裏付けられている。
これとは対照的に、退役軍人省附属パロアルト保健システムお
よびスタンフォード大学Center for Primary Care and Outcomes
Research
(カリフォルニア州)のAllison Kurian, MDをリーダーとする
研究では、効果は3分の1において3-5年目に低下するが、6-10
年目まで持続すると考えられた。論説において、Hillner博士
およびSmith博士は、これらの数値を「過度に楽観的」と評し
ている。これらの報告では、5年以降の全身再発のリスクにつ
いてもわずかに相違がみられたが、これは結果にはほとんど影
響を及ぼさなかった。
また、両研究では、全身再発が起こった場合に、費用と予後の
推定において非常に異なるアプローチが取られた。Liberato博
士らは、当初トラスツズマブ補助療法を受けなかった女性だけ
に後のトラスツズマブ療法を行い、転移患者の生存期間はトラ
スツズマブ補助療法を受けた患者よりも長くなると考えた。Kurian
博士らは、両コホートに後のトラスツズマブ療法を行い、死亡
するまで投与すると考えた。Liberato博士の研究チームのアプ
ローチの方が、科学的に筋が通っているが、Kurian博士らが採
用した方法が、実際に行われている可能性が最も高い、と論説
委員は述べている。
米国では治療期間を検討する計画なし
「米国において現在、治療期間の問題を検討する計画がなくて
残念である。幸運なことに、フランスが6カ月間と12カ月間の
トラスツズマブ療法を比較する試験を開始した」と、Hillner
博士およびSmith博士は述べている。
不確実なことがらからの洞察も今回の研究の主要な結論に重要
である、と同博士らは指摘している。「トラスツズマブの効果
が平均点推定値よりも劣る場合、またはトラスツズマブの効果
持続期間が5年未満である場合、費用対効果比は著明に高くな
る」。「結論の重要性を考えると、さらに臨床追跡調査を実施
した後にこれらのモデルを更新することが著者およびジャーナ
ルに期待される」と、同博士らは付け加えた。
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昨年、癌治療学会に行ったとき、分子標的薬についての
講演がとても多く、新しい薬剤に期待しているのが伺えました
。
その期待の分子標的薬たちは値段がとても高く、
講演の中で複数の演者がでもその費用対効果について
取り上げていました。
近々、大腸がんで使用できる分子標的薬もとても高額で
一ヶ月の薬代だけでも100万円は超えると思われます
(たしか…)。
1割負担でも10万以上になってしまいますね…
費用対効果の判断はとても難しいと思います
もし、自分か患者なら、1日でも延命できるのであれば
どんな高額の薬剤でも使いたいと思います。
ただ、それによって家計が破綻し、残った家族に迷惑を
かけるならやらないと思います。
国で保証されるのが一番ですが、お金は沸いて出てこないので
その財源はどこからか徴収しなければなりません…
難しいですね…