『猿来たりなば』 エリザベス・フェラーズ
イングランドの片田舎イースト・リートで事件は起こった。救いを求める外国人からの手紙を受けとったトビーとジョージ。「わたしのアーマが誘拐された」という内容から、二人は現場へと向かう。依頼主は動物心理学者、そして誘拐されたのは・・・題名にある【猿】は、場所柄、ニホンザルではなく【チンパンジー】のこと。帯やら裏表紙やらの内容紹介全てに出ているので言ってしまいます。誘拐されたのが、チンパンジーなのです。「おや?」何か面白い事がありそうな予感。この時点でこの題名、設定は成功しているといえるのかもしれまん。話としては、初めのほうこそ多少まごついていますが、次第にテンポよく読めます。名探偵なのか迷探偵なのか、トビーとジョージの役どころがなかなか面白い。登場人物の男女関係が多少複雑ですが、全体的にはそれほど絡まっているわけではない。その展開のなか、この真相にはやられました。しっかり読んでいれば気づいてもおかしくないのに・・・見落としてしまった。一番悔しい、それでいて一番面白くもあるというパターン。ラストにも意外性があり、思わず、はじめにもどって読み返してしまう。してやられた感が強く、このあたりはとても巧いです。この作品の特徴は、チンパンジーを配したことにあるかと思います。もちろん、それなりの役割は果たすのですが、存在感がなく小道具の一つという感じもしてしまいます。チンパンジーについての薀蓄や、突飛な発想などを期待していたのですが、そういったものはそれほどありませんでした。もっとも、チンパンジーを登場させたのは、あくまで“導入の為”といえるのかも。勝負をするところはきちんと別のところにあって、まずは本をとらせる為の仕掛けをしたのかな、とも思いました。そういえば、誘拐事件って結局どうなったのでしょうか?読み落とし?もしくは内容を忘れたか(読了してから少し経つし)それとも・・・