『新化』 石黒達昌
【ハネネズミ】毛が薄く、背中に二枚の小さなハネをもつ。体全体が発光して、涙を流すという言い伝えがある。北海道の神居古潭にのみ生息していたこの小動物は・・・・・・たった今、絶滅した。SFミステリー。だそうです。ジャンルはともかく【ハネネズミ絶滅の謎】に迫ります。私が読んだのはハルキ文庫ですが、“表紙” に瀬名秀明さん、鈴木光司さんの解説が少し付いています。かなり珍しい形式かと思いますが、それは本文の構成と無関係ではないでしょう。というのも、この話はレポート形式をとっているので、注意の意味合いもあるのかな、と。写真やデータ(少数ですが)、参考文献なども使っていますし。もっとも研究者が直接書いた論文、というわけではなくて、後事を託されて書かれたもの、という体裁をとっています。以前、『もののけ化石~』のところで、希望したように学術的に(?)架空の存在に対してアプローチしています。こういうのを待っていた!と狂喜乱舞してもいいところですが、「硬すぎてイマイチ」というワガママで理解度の低い、困った読者です(笑)それでも【ハネネズミ】の存在はなかなか面白いです。ネズミというのもミソです。いわゆる実験用のマウス。人間の手で容易に純系種(何代にもわたる近親相姦の繰り返し)が生み出されしまう。生殖と死。遺伝子の保存と種の絶滅。一つの例外によって崩れ去る物理法則。遺伝、進化、そして新化。とても興味深い分野だと思います。結局、「何の為に生きているんだろう?」という根本へとかえる。そして「このまま、どこへ行くのだろう?」という問いも。大筋とは関係ないですが・・・5件中4件に当てはまることを、“圧倒的”と言い切ってしまうのは違和感があります。分母少な過ぎでは?研究者ってこの数字で動くのかな?と疑問。こういうのが2回はあったし。雑というか、中途半端に感じてしまいました。細かすぎ?(笑)