◆能楽囃子
笛:一噌隆之 小鼓:田邊恭賀 大鼓:亀井広忠 太鼓:小寺真佐人
解説の萬斎さんが退場されると、囃子方の四名が舞台に登場されました。
笛の一噌さんにはグリーンのスポットライト。 小鼓の田邊さんはブルー。 大鼓の亀井さんには情熱のレッド。 そして、太鼓の小寺さんにはイエローのライトが当てられました。
一噌さんの緩やかな笛の音でお囃子が始まり、曲調が変化するたびにスポットライトや後ろのスクリーンの色も変化。
私の席はちょうど亀井さんの真正面となり、亀井さんの魂のこもった鼓の甲高い音と真剣な眼差しに圧倒されました~。
萬斎さんが解説で仰ってた、四人が全く違う方向から繰り出すカルテットにしばし放心。
ホントに指揮者なしで、あんなに統率された音楽が奏でられるとは不思議です。
視覚効果も良いけれど、それがなくても体の奥の奥、芯(丹田)に響くものでした。
最後は魂が昇天していくような(昇天したら死んじゃうけどね(爆))、高揚感を持ちました♪
唐人相撲でもお囃子が入るのですけど、舞台には出て来られず(裏で演奏されてました)、四人のお姿を拝見出来たのはこの時のみ。
もうちょっと、聴いていたかった~。というのが正直な感想です。
◆見物左衛門
<あらすじ>
見物左衛門と名乗る男が深草祭に出かけ、途中で九条の古御所を見物する。
競馬(くらべうま)の乗りぶりや落馬するさまを楽しみ、さらに相撲見物に行って
自身で取り組むことになって・・・(パンフより抜粋)
旅姿の万之介さんがひとりで舞台に登場され、萬斎さんが仰っていたように「見物左衛門でござる」と名乗って始まりました。
万之介さん一人で見えない相手と話したり、厩にいる馬の毛色に感心したり、果てはイチャモンつけた相手に怒ってみたり、石を投げ付けられたり、相撲を取ったり。
あれもこれも、一人で演じて表現されてゆく。
相手が誰もいないと結構セリフのリズムを取るのが難しいと思うのですけど、万之介さんは終始安定したリズムで一人狂言を見せてくださいました。
見物左衛門が巡る深草祭の様子が、舞台後方のスクリーンに時代物の屏風絵風に映し出されてより一層わかりやすく伝えてくれます。
でも、その絵がなくても万之介さんが語られる言葉だけで、その場その場の情景が目の前に繰り広げられているように見えちゃったりするから凄いです。
この曲はやはり、お稽古を積まれた確かな技がないと出来ないと感じました。
万之介さんは素晴らしい狂言師です、ホント♪ 珍しい狂言が見れて本当に良かった♪♪♪
◆唐人相撲
<あらすじ>
唐に滞在していた日本の相撲取りが、皇帝に帰国を願い出ると、名残にもう一度相撲を見せて欲しい
と所望される。
通辞の行司で相撲が始まり、臣下の者たちが次々に相撲取りに挑んでいくが、数人がかりで
かかってもかなわない。
その様子を観戦していた皇帝は、あまりの不甲斐なさに我慢できず、ついに自ら相撲取りに
勝負を挑むが・・・。(パンフより抜粋)
20分の休憩の後、ホールに戻ってみると舞台の幕が下ろされていて、唐人相撲が始まる時には会場の非常灯も消されて真っ暗けになりました~。
相撲取りの萬斎さんが「日本に帰朝する(帰る)ことを皇帝に奏聞しよう(申し出よう)」と舞台の左端に登場して述べられて退場されると、幕が開きました。
舞台中央に4本の赤い唐仕様のふっとい柱が立っていて、真ん中を仕切るように白いスクリーンが降ろしてあってね。
中国らしい音楽にのって、スクリーンの後ろを唐人と皇帝が足を振り上げて通っていくのですが、皇帝が中央に来たときに皇帝のシルエットが超~~巨大化して会場の笑いを誘いました。
皇帝ってのは、これくらい偉い人なんだぞ!っていうアピールなんでしょうね。
そして、また行列が歩きだして舞台に大人数が勢揃いすると、スクリーンが上に上がって代わりにチャイニーズ・ランプが上から降りてきて、舞台は唐御殿に様変わり☆
派手な衣装を着た唐人たち。見るからに神々しい皇帝さま。通辞役の石田さんの素っ頓狂な唐韻言葉が会場の笑いを誘います。
唐人と次々に相撲を取っていく相撲取り萬斎さん。 身が軽やかですね~。
唐人さんがハッスルする相撲の内容は、手押し車や三点倒立、肩車二組の「合体」ものや、組体操の3段ものに、お子ちゃまの可愛らしくて力強い二人組みの回転技。
それから、倒れても頭や足を床に付けないという力技とか、ストリートダンスでよく見かける地面スレスレで片足をグルグル回す技、すがぽんさんのパントマイムもの。
そして、月崎さんの怖がりでへっぴり腰な唐人の側転&バック転もの。などなど。。
ホントに思わず、おーー!と、拍手が何度も沸き起こる素晴らしさでした。
誰も相撲取りに敵わないので、全員で挑むのだけど、その時に通辞役の石田さんの音頭で会場の「ホーチャー」の声援を送りました♪
けど、みんな萬斎さんにヒックリ返されて終いです(笑)
これには皇帝も黙って見ていられなくて、自分が取る~~と言うのですが。。。
相撲を取る準備をする時に、お囃子の音に乗って万作さんは美しい舞を披露してくださいます。
ホントに綺麗ですね~。無駄のない動きと所作。 「素の美」です。
そして、一回目の相撲を取った時点で、相撲取りが皇帝の玉体に直接触るのは許しがたい!と、「待て」が入り、玉体を護るためにコモを体に巻くんです。
このシーンにもお囃子が入って、コモに手を突っ込むのを躊躇する万作さんの表情や所作が不思議と囃子の音にピッタリ合っていて面白かった。
この時、囃子方は舞台に出ておられないのにね~。
そして、皇帝の長~~いお髭がコモの内側に入ったままなので、髭をコモから出す髭掻き役(万之介さん)が登場します。
長い柄をもっての登場で、ストーリーを知らない方はナンだろう~?って思われたでしょうね。
その長い柄の先から、髭を掻く鉤爪型の物がニョキっと出た時は(万之介さんが操作されます)会場は大笑いでした。
この一連のシーンもお囃子に乗って行われます。
髭を掻き出す時に曲調がゆっくりになったのが印象的だったな~。
結局、皇帝が負けそうになったので、唐人たちが慌てて皇帝を担ぎ上げて「日本に帰っていいよ」と伝えて萬斎さんを先頭に舞台をぐる~ッと回られました。
その時、また上からスクリーンが降りてきて、その後ろに回られてみなさんのシルエットが舞台の袖に消えていって退場~です。
拍手喝さいの中、幕が降りて、会場は真っ暗のまま。 鳴り止まない拍手の嵐・嵐・嵐♪
暫くすると幕が開いて、舞台上には出演者が勢揃いされていました☆
萬斎さんが会場に向かって左右の演者に手を広げて紹介し(言葉はなしです)、最後に全員で深々とお辞儀をされて、幕が降りました。
その間、会場はずーーっと、拍手を送り続けてました~。
まさか、カテコもあるなんてね。 今回は地元の人達の参加があったから特別ですね。
万之介さんの技ありの一人狂言「見物左衛門」。 登場人物が狂言の曲では最多の「唐人相撲」
萬斎さんの解説もわかりやすく楽しいものでしたし、囃子方の渾身の能楽囃子も見応え、聴き応え充分!でした。
モー娘。にちょっと心ウキウキな萬斎さんが垣間見れたのが、一番の収穫かも!?
びわ湖ホール開館10周年に相応しい狂言公演でした。
素敵な演技を見せて下さった一般参加の方々にも感謝、感謝です。 お疲れさまでした☆
ちょっと、余談ですが・・・
ホールで行われる唐人相撲。 相撲取り役の萬斎さんは舞台の左にいらっしゃる事が多いだろうと予測し、チケットはセンターブロックの左側を取りました。それも2列目という良席♪
私の読みはドンピシャ!で、萬斎さんは左の舞台袖から何度も登退場されて、それも舞台の真ン前スレスレの所に出てこられたので、凄く至近距離で拝見出来ました。
相撲を取られている時も左に立たれることが多くて。。 予想が当って良かった♪です。