神奈川県民「トゥーランドット」は正にグランドオペラの迫力!
鑑賞日:2020年10月18(日)14:00開演入場料:3,000円(E席 3階11列)【主催】神奈川県民ホール(指定管理者:(財)神奈川芸術文化財団)神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2020グランドオペラ共同制作プッチーニ作曲オペラ「トゥーランドット」全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付き)会場:神奈川県民ホール大ホール指 揮 :アルベルト・ヴェロネージ→佐藤正浩演出・振付 :大島早紀子装置デザイン:二村周作衣裳デザイン:朝月真次郎照明デザイン:沢田祐二合唱指揮 :佐藤宏振付助手 :白河直子演出助手 :菊池裕美子/根岸幸舞台監督 :八木清市ダンス :H・アール・カオス合 唱 :二期会合唱団児童合唱 :赤い靴ジュニアコーラス管弦楽 :神奈川フィルハーモニー管弦楽団出演トゥーランドット姫:岡田昌子皇帝アルトゥム:大野徹也ティムール :デニス・ビシュニャ王子カラフ :芹澤佳通リュー :砂川涼子大臣ピン :大川博大臣パン :大川信之大臣ポン :糸賀修平役 人 :井上雅人メインダンサー:白河直子ダンサー :斉木香里、木戸紫乃、野村真弓、坂井美乃里感想: 毎年恒例の神奈川県民ホール・オペラ・シリーズは、大分iichiko総合文化センター、山形県総合文化芸術館との共同制作で予定通り「トゥーランドット」オペラ公演が行われるとのことで、試合前で混雑する横浜スタジアム前を通り過ぎ、横浜山下公園まで出来かけた。 今回新型コロナ感染症の入国制限で指揮者と1日目のリュー役が大村博美→木下美穂子へ変更になった以外は予定通りの出演者となり、ホールの方も、体温チェック、チケット自身で半券もぎり、ドリンクサービス、オペラグラス貸し出しなし、ロビー椅子も間を空ける等の対応がされていた。 客先は先日5,000人以下は制限無しの方針が出されたものの、1階前方3列全てとそれ以降は前後左右を空席に設定されており、半数以下の設定。当初から前後左右空席での発売だったが、1階前方3列空席にしたため、1ヶ月前に座席変更の案内が届き、当方は1つ隣に変更になった模様。また3階の後部奥の席だったためか、当方より後ろ3列は全て空席だった。 舞台が幕よりも張り出し、オケピット上の1/3程度まではみ出して設置。床が光を反射するようになっており、そこへ上から照明を当てるため、出演者が浮き出ているように見える。オケピットのカバーは照明入り込みと歌手からの飛沫防止だったのでしょう。 指揮者登場、暗転で音楽が始まると紗幕越しに舞台2箇所に照明が見える。幕が上がると1つは宣言を読み上げる役人へ、もう一つは舞台天井から頭を下に吊るされた女性へ。女性は歌詞に合わせ時々動くが、直ぐに止まり、これまでに殺された人々の恨み、トゥーランドットの心境の象徴なのか。 この後も間奏場面でダンサーが登場し、ワイヤーを使った柔軟で幻想的な踊りを披露。3幕のピン・パン・ポンが結婚を取り下げるようカラフに美女達を差し出す際は唯一物語の登場人物となるが、それ以外は抽象的な役割のため、オペラへ直接的な関係はない。基本的に原作通りの物語の進行となっており、変な割り込みや、昨年の大野和士指揮「オペラ夏の祭典」のようなストーリー変更も無く良かった。 衣装も素晴らしく、3幕最後トゥーランドットが愛を知った所でピン・パン・ポンがそれまでの中国風衣装からスーツ姿に変わって出てくるなど工夫が凝らされていた。 歌手、合唱には、マスク、フェイスガードは無く、ある程度の間隔が取られていたが、ティムールを支えるリューは常に接近し、3幕にトゥーランドット姫とカラフが接吻する場面は全て歌い終えた所で抱擁となり、無理に離すような演出ではなかった。 舞台左右の天井までの壁には、場面により複数の窓が開かれ、そこに合唱が登場。舞台上のメンバーと合わせて歌うため、その歌声は厚く迫力満点。「トゥーランドット」の合唱の重要性と音響効果をよく理解された演出でしょう。 また、児童合唱も、正確な歌唱で大変良かった。 管弦楽は、指揮者、弦楽、パーカッションは全てマスクを装着。グランドオペラに相応しい、分厚いアンサンブルを奏でていた。ただ、1幕ピン・パン・ポン登場の場面で、演奏と歌とのズレが大きく少々聞きづらかったのは残念。 歌手は、皆さん素晴らしい。まずはタイトルロール岡田昌子さんは、2008年サマーミューザで同役を聞かせて頂いたが、その時より声が安定し最後まで正確なピッチで歌われており、日本人歌手では貴重。その容姿も正しくトゥーランドット姫で、演技含め昨年「オペラ夏の祭典」のテオリンより適役。 リュー役の砂川涼子さんは、何度も歌われている役でもあり、全ての歌声に場面毎のリューの想いを込めて歌われているのが伝わって来て、最期は思わず涙、さすがでした。 そしてカラフ役の芹澤佳通さんは、3幕有名なアリアの後も、最後まで大音量のオケに負けずに歌声が届き、中々良かった。来年2月の東京二期会「タンホイザー」でもタイトルロールに決まっており、二期会期待テノールの星でしょうか。 新型コロナ感染症の影響でしばらく止まっていたオペラ公演ですが、歌手、オケ、演出が揃った本格的なグランドオペラを満喫することが出来た。 二期会と藤原歌劇団の両方から、役にあった歌手が出演する所がホール主催公演のメリットであり、プログラムには記載なかったものの来年の開催も心待ちに。End