小澤FES「ベアトリスとベネディクト」は盛り上がりに欠けて
鑑賞日:2015年8月29日(土)15:00開演入場料:¥10,000→¥9,000 (C席:4階3列) 【主催】セイジ・オザワ松本フェスティバル実行委員会 (財)サイトウ・キネン財団セイジ・オザワ 松本フェスティバル2015オペラ「ベアトリスとベネディクト」ベルリオーズ作曲(全2幕:フランス語上演/字幕付)会場:まつもと市民芸術館・主ホールスタッフ 指揮:小澤征爾→ギル・ローズ演出:コム・ドゥ・ベルシーズ装置:シゴレーヌ・ドゥ・シャシィ衣裳:コロンブ・ロリオ=プレヴォ照明:トマ・コステール映像:イシュラン・シルギジアン管弦楽:サイトウ・キネン・オーケストラ合唱:OMF合唱団キャスト出演ベアトリス:ダニエラ・マック→ヴィルジニー・ヴェレーズ→マリー・ルノルマンベネディクト:ジャン=フランソワ・ボラスエロー:リディア・トイシャークラウディオ:エドウィン・クロスリー=マーサードン・ペドロ:ポール・ガイソマローネ:ジャン=フィリップ・ラフォンウルスル:キャレン・カーギルレオナート:クリスチャン・ゴノン伝令・公証人:ヴァンサン・ジョンケ感想: 夏季後半恒例の「サイトウキネン松本フェスティバル」が今年から「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に名称を代え、そのオペラ公演チケットが奇跡的に取れたので、8月最後の土曜日に雨模様中、松本へ向かった。 8/7に小澤征爾氏骨折で指揮者変更のニュースが入り集客を心配したが、会場ロビーには「完売御礼」の札が出され例年通りの賑わい、ホール座席にも空席無く、立ち見のお客も入っていた。 チケット確認時に席ランクに合わせた返金を受け取る。当方初めての経験で、小澤征爾氏の意向なのでしょう。 ベルリオーズ「ベアトリスとベネディクト」は初めて聴く作品。シェイクスピアの戯曲『空騒ぎ』が原作で、晩年のベルリオーズ自身がフランス語のリブレットを書き作曲したもので、オペラ・コミック形式でセリフも多く入る。 序曲は、リズミカルや美しい旋律が聞かれベルリオーズらしい。幕が開くと全面ガラス張りの植物園の温室のような建物が登場。中央広間の周囲に色々な植物が植えられ、舞台上手側にはレンガに囲まれた池に花が咲いている。 2幕結婚舞踏会の場面では、この舞台装置にテーブルや椅子を持ち込み、照明と映像を使って夜の星空や花火の様子を表現。 管弦楽はハープ2台入り、オケボックスはすし詰めの状況。各管楽器はソロ含め、外すことは勿論無く、素晴らしい演奏。弦楽器も素晴らしい音色だった。バンダの演奏も素晴らしい。 合唱はOMF合唱団と地元オーディション募集のようだが、プロ級の歌声と演技で、オペラ全体を盛り上げていた。 本作品はオペラ・コミックで劇的な要素があるわけでなく、アリア、重唱などがより重要になるのだが、ベネディクト役ジャン=フランソワ・ボラスのアリアはよく通るテノールの声で良かった。またエロー役リディア・トイシャーもリリコのソプラノで美しく、1幕最後のクラウディオ役エドウィン・クロスリー=マーサーとの2重唱も素晴らしい出来だった。 残念だったのはベアトリス役で当初発表ダニエラ・マックの代役ヴィルジニー・ヴェレーズが初日のみで、2日目から更に代役のマリー・ルノルマンが歌った様なのだが、ビブラートの多いこもり気味の声質で、声の抑揚が少ないため、盛り上がりに欠ける。へそ曲がりで皮肉屋であるが、最後はベネディクトとの婚姻届にサインをしてしまう心境の変化が客席に聞こえて来ない。これは指揮者の曲作りにも責任の一旦はあるのでしょう。 当初予定通りの指揮者と歌手であれば、もっと違った音楽になっていたのではと思うと、1,000円では埋まらない残念な心境に。 ただ、松本のホテル、レストラン、観光地での接客は大変親切で、街全体でこの歴史ある音楽祭を盛り上げているように感じる。 夏の終わりに松本に出かけ、温泉、美味しい蕎麦を食べて、クラシック音楽も楽しめるなら、十分価値がある音楽祭だと感じた。End