藤原カルメル会は修道女の合唱が素晴らしい
鑑賞日:2010年2月7日(日)13:00開演入場料:¥2,000 F席5階(R1列3番)主催:(財)日本オペラ振興会・(社)日本演奏連盟2010都民芸術フェスティバル参加藤原歌劇団公演プーランク作曲オペラ「カルメル会修道女の対話」(全3→2幕 フランス語上演/字幕付)会場:東京文化会館 大ホール指 揮:アラン・ギンガル演 出:松本 重孝合 唱:藤原歌劇団合唱部管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団出演:フォルス侯爵: 三浦 克次ブランシュ・フォルス:佐藤亜希子騎士フォルス: 小山陽二郎クロワシー修道院長: 郡 愛子リドワンヌ修道院長: 本宮 寛子マザー・マリー: 牧野真由美コンスタンス修道女: 大貫 裕子マザー・ジャンヌ: 二渡加津子マティルド修道女: 松浦 麗司 祭: 所谷 直生第1の人民委員: 川久保博史第2の人民委員: 清水 良一他感想: 今年初めてのオペラ鑑賞は藤原歌劇団「カルメル会修道女の対話」。何たって2,000円で聴けるのは魅力、次々週の二期会「オテロ」も同様で「都民芸術フェスティバル」として補助金が出ているためらしい。 開演に先立ち公演監督の岡山廣幸より時代背景と物語の紹介があり。藤原としては初めて取り上げる作品で、原作は3幕だが今回演出により2幕へ変更したとのこと。 もともと演劇台本から作られており、幕内の場面が細かく変わって行くため、原作2幕途中の物語上時間経過する所で幕(休憩)にしたことは特に違和感はなかった。 演出も場面転換時に幕ではなく4枚の黒布を降ろし、間から後部を見える様にして黒布後部も舞台とすることで音楽を途切れさせずに物語を進めて行った所は工夫されている。侯爵邸や修道院祭壇、処刑台も豪華ではないものの照明を上手く使い広がりを見せていた。 但し、休憩後の2幕始まり前のプロジェクタによる時代年表表示、最後ギロチン台周囲への絵画表示は明らかに違和感がり、蛇足感は否めない。音楽だけで十分なのに。 1900年代作曲家プーランクの音楽は、モーツアルトやプッチーニ、ワーグナー的な部分が聞かれ、ライトモチーフによる人物毎の旋律、場面毎に独立した音楽ではあるが、その中に美しい旋律が沢山現れる。管弦楽は、若干危ないところがあるものの、演出に合わせ淀みなく音楽が流れた印象。 ベテラン、中堅、若手混在の出演者は各々役に合った歌声で安心して聴けた。その中では、コンスタンス役の大貫裕子が役にあった明るい輝きのある声質で、5階席まで十分声が届いていた。 一番良かったのは、本公演1幕最後の「アヴェ・マリア」と最後処刑場面の「サルヴェ・レジーナ」の修道女十数名による女声合唱。 普段主役級を歌っているメンバーが合唱をする訳だが、けして飛び出さず、合わせることを意識しており、このあたりは日本人オペラの良い所では。 特に最後の処刑場面は一列に並んで歌いながらギロチンの擬音に合わせて1名ずつ倒れて、歌声は段々と小さくなって行き、最後残ったコンスタンスが倒れる寸前に、舞台袖から現れたブランシュが歌い継いで最後に倒れるラストには思わず涙が。 この様な悲劇の結末では、終わって数十秒、せめて幕が完全に閉まるまでは静寂の余韻を楽しみたいのだが、残念ながら今回も客席の拍手とブラボーは早すぎだった。 今年の藤原歌劇団オペラ公演はこの後6月「タンクレーディ」のみで(11月ガラコンはあるが)、昨年から少なくなっているのが何とも寂しい。 来週は新国立劇場「ジークフリート」観劇予定。そう言えば、先日の新国立劇場来シーズン公演発表の席でオペラ部門芸術監督予定者の尾高忠明が「いずれは専属楽団を持つ劇場に」と言ったようだが、東フィルとの関係はどうなるのか。End