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テーマ:ゲームや漫画の二次創作(39)
カテゴリ:【小説】受け継ぐ者
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※この小説は、茅田砂胡さんの小説『スカーレット・ウィザード』 『デルフィニア戦記』『暁の天使たち』『クラッシュ・ブレイズ』 を主軸とし、オリジナルキャラを主人公とした二次創作です。 ●茅田さんの小説のイメージを壊したくない。 ●キャラが本命以外(オリキャラ)と関係するは許せない! と思われる方は、読まれないようにお願い致します。 読まれた後の苦情は、うけつけませんので、ご了承ください。 ========================================================= 年に数回、長期休暇の度にダニエルの所に数週間滞在することが、アーナの通例行事となっていた。 ――ジャスミンがいなくなってしまってからは、特に。 そのたびに、アーナは苦笑して思ったものだった。 「母に生き写しの顔でよかった。」と――。 誰が見ても美男だと言うだろう父の顔に、似たくなかったというと嘘になる。 が、クーアの家に足しげく通うには、そんな顔では問題があっただろう。 いくら、父の顔が整形したものだとしても、目の色や髪の色が似通っていれば、邪推するものは後を立たないはず。 そんな、自分ではどうしようもない(染めたり、整形したりする以外)ことで、可愛いダニエルに表立って会いにいけないなんてことにならなくて良かったと、本当に思っていた。 『受け継ぐ者』 【アーナの章】2 ダニエルが、現在アーナが通っている連邦大学に入学するのが決定した頃だっただろうか、いつものように、数週間の滞在予定でアーナがダニエルのところへ遊びに来ていた。 いつもは笑顔でアーナを迎えるダニエルが、なんだか少し、暗い表情をしていた。 「何かあった?」 問い掛けるアーナに、ダニエルはしばらく考え込んでいたようだったが、何かを決心したみたいに顔を上げた。 「アーナは、クーアの総帥になりたくない?」 「……は?」 思ってもみなかった言葉に、アーナは目を丸くした。 この時、すでに大学生になっていたアーナは、ダニエル・クーアとの交友関係(あくまで友達としての)を自分から誰かに話すことはなかったし、それほど公に通っていたわけでもなかった。 しかし、父に頼んでまで秘密にしていたわけではなかったので、どこからかそう言った情報がもれ、いやみのように、「7つも8つも下の子供を誘惑して、未来のクーア総帥の妻の座か、副総帥でも狙ってるんでしょ。」と、言われることもしばしばあった。 が、ダニエルがアーナに対して、いやみを言うはずがない。 「いきなり、どうしたの?」 「……僕、クーアの総帥になんて、なりたくないんだ。」 ああ、と、アーナは納得した。 ダニエル自身が総帥になりたくないから、父の娘であるアーナに、総帥になってくれと言いたいらしい。が――。 「無理よ。」 アーナの答えは、即答だった。 父との関係を明かすつもりは、全くない。 さらに言えば、クーアは、ダニエルの母親であるジャスミンのものだった。 現総帥は、ダニエルとアーナの実の父であるが、ジャスミンとアーナには何の関係もない。 まして、必要以上の地位や財産にも興味のないアーナにとって、「クーア財閥で働く。」というのは興味があっても、「総帥になる。」というものには、全くの興味が湧かなかった。 大学で経済学を学んでいるのは、将来総帥になるダニエルを支援できたらいいな~という、単なる希望的観測な理由からだった。 もちろん、そうならなくても、マイナスにはなりえないのだから。 そのアーナの答えを、ダニエルは、「自分がジャスミン・クーアの子供ではないから」遠慮していると思ったらしい。 まあ、あながち間違いではないのだが――。 「大丈夫だよ! 父さんの子供だって発表したら、きっと、誰だって反対できない! なんだったら、僕が成人した時に、アーナに全部譲るっていってもいい! そうしたら、父さんにだって、反対できないよ!!」 我ながらいい考えだ!と、ダニエルは満面の笑みでアーナに言う。 「……ケリーの子供だって発表はできない。……いくら、ジャスミンとの結婚前の話だといっても、スキャンダルには違いないもの。」 「じゃあ、やっぱり、僕が――。」 「ダニエル。」 ダニエルの言葉を、アーナは強い口調でさえぎった。 きょとんと、ダニエルは、まだ自分より10センチ以上上にあるアーナの顔を見上げてくる。 「あなたは、総帥になりたくなくて、他に何かなりたいものがあるんでしょう?」 まっすぐにダニエルの瞳を見返してくるアーナの青い瞳は、ダニエルのものより明るく、そして少しだけ緑がかっている。 真剣なアーナの瞳に、ダニエルは少し戸惑ったように、こくんとうなずいた。 「それになるために、私がなりたいと思っていない総帥の座を押し付ける……と言ってはなんだけど、『なれ』って言うのは、何かおかしいとは思わない?」 アーナの言葉に、ダニエルは「アッ」と小さく叫んで、顔を赤らめた。 ダニエルは、アーナに言われるまで、そのことに全く気付いていなかった。 自分が『船乗り』になりたいから、なりたくない『総帥』をアーナにやってもらう。 そうすると、アーナはなりたかったものにはなれない。 ダニエルは、自分の考えがいかに子供っぽかったかを思い知った。 軽い自己嫌悪に陥ったらしいダニエルの頭を、アーナはぽんぽんと軽くたたくように撫ぜた。 「ダニエルが何か別のものになりたいっていうのは、悪いことではないし、応援したいと思う。だから、代わりに誰かに総帥になってもらうっていうのは置いといて、自分がなりたいものに、どうやったらなれるか、そっちの方を考えなさい。」 ダニエルは、こくんとうなずいて、「ありがとう。そして、ごめんなさい。」と言った。 アーナは「うん。」と言って、またダニエルの頭を撫ぜた。 ――で、何になりたいの? ――船乗り! ケリー・キングみたいに、前人未到のことをするヒトになりたい!! 元気に答えたダニエルに、一瞬目を見開き、アーナは笑いをこらえるのに必死だった。 (ジャスミン、ダニエルは、あなたになって欲しかったものになりたいみたい。) あこがれのケリー・キングが、自分たちの父であることに全く気付いていないようだけど。 と、アーナは心の中でつぶやいた。 * * * それから一年あまり後――。 ――ダニエルが連邦大学を飛び出したのを知ったのは、ダニエルが伝言を頼んだ『天使』から。 見たことも無い、不思議に綺麗で、同じくらいの年頃に見える割りに妙に可愛い『天使』を目の前にして、少しだけ瞳を潤ませてアーナはポツリとつぶやいた。 「……応援するって言ったのに、見送りもさせてくれないなんて、ひどいと思わない?」 問い掛けられた『天使』は、困ったように首を傾けた。 ≪続く≫ ************************************** ダニエル出奔まで。 一応、『天使』との出会いをここにしておきました。 アーナ自身は、母親から大抵のことを聞いてました。 それに、ジャスミンと知り合ったときも、小学生ぐらいなら、会話の内容も覚えてるということで。 …無理やり? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.08.22 15:08:11
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