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2008.08.23
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こちらは『戦国BASARA(2)』の世界にトリップ!の
ドリーム小説(名前変換なし)です。
●キャラのイメージを壊したくない。
●ドリーム小説は受け付けない。
そういう方は、読むのをご遠慮ください。
読まれた後の苦情はうけつけません。
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【時の迷い人】~7~





男は、焦りと怒りを隠そうともせずに全力で森へと駆けていくカゴ吉という男を、距離をとり、気配を殺して追いかけていた。

森に入っても少しも足の速さが衰えないカゴ吉だったが、男にとって、ついていくのは全く苦にならない。
さらに、森に入ってしまえば、身を隠す枝葉がある分、追跡は男にとってさらに楽になる。

音も立てず、葉の一枚さえ揺らさずに枝から枝へと渡り、カゴ吉を追っていた男は、ハッと自分とカゴ吉以外の人間の気配に気付き、次の瞬間、自分へと向けて飛んできた短刀をクナイで叩き落した。


「――こんなとこで、逢うなんてなあ。」


短剣が飛んできた方向へと意識を向けると、そこにいたのは、――竜。


奥州の独眼竜だった。



 * * *


「……竜の旦那こそ、なんだってこんなとこにいるわけ?」

飄々とした雰囲気はそのままだが、決して笑っていない目で男――佐助は、不意に現れた男を見ていた。

ここは、国境近くとは言え、間違いなく甲斐、武田領。

いくら、現在は交戦中ではないとはいっても、以前に戦場で顔を合わせたことがあり、しかも、現在、同盟を結んでいるわけではない奥州の独眼竜――奥州筆頭の伊達政宗がいていい場所ではない。

まあ、たとえ同盟を結んでいようと、無断で武田の領内に立ち入ってきていい人間ではないのだが。


「HAーHA!! 俺がどこにいようと、俺の勝手だ。」

「……ここにいて、そんな言い訳が通じるはずが、ないでしょ!」


言いながら、武器を構えて飛び掛ってくる佐助に、伊達政宗は楽しそうに迎撃する。

森の中に似つかわしくない、激しく金属が打ち合うような音が響く。

木々が生い茂る森の中。
身軽に、枝などに飛び乗って、自由自在に動き回れる佐助に分があるかと思われたが、やはり独眼竜は負けていない。
佐助の攻撃を受け流し、それでいて、自分から仕掛けるのも忘れない。

佐助としては、このままここで始末してしまえれば、後々の憂いがなくていいかも。という考えが浮かんだが、瞬時に、主の怒号が想像できて、わずかに口がゆがむのを感じた。

(――ここで始末つけたら、旦那がうるさいだろうな~。)

そんな考えが浮かんだのは否定しない。

伊達政宗を好敵手とみなし、再戦を心待ちにしている主は、佐助を本気でなじるだろう。

「やっかいだな~。ホント、なんであんたが、こんなとこにいるわけ?」

「HA! どうだっていいだろ! 猿!! 真田じゃねえのが、ちぃと物足りないが、相手してやるよ!!」

「俺様、これでもお仕事中なのにな~。」

といいながも、こちらの仕事を優先すべきだというのが佐助の一瞬の判断だった。
独眼竜を捕らえ、主たちの下へと連れて行けたら、また、それが無理でもここで消してしまえれば、それは今後の武田の有利につながるのだから。

何度か剣を交えては離れ、を繰り返していた佐助だったが、その音に気付いて、はっとそちらを伺った。

「猿! 余所見とはいい度胸じゃねえか!!」

独眼竜は、その佐助に怒鳴りつけたが、佐助の意識はすでにそちらへ行っており、政宗の言葉になんの反応もしなかった上に、そのままその場から消えた。

「Shit! 待ちやがれ!!」

その言葉を後ろに聞きながら、佐助は先ほど音がした方へ全力で向かった。

(今のは確かに鉄砲の音。……そんなもんまで持ってんのか? もしかして、織田残党?)

佐助の現在の任務は、この森付近へと逃げ込んだらしい、のぶせりの始末と被害状況の調査だった。

この森の麓の村ではまだ被害が無いようだったが、少し離れた隣村では、すでに結構な被害がでていた。
そちらの村で、役人に追われたのぶせりが、コチラの方へ逃げたとの情報があり、それを確かめにきたのだ。

――まさか、伊達政宗と、こんなところで遭遇しようとは、予想もしておらず、ついついそちらに構ってしまったのだが……。

もし、先ほどの猟師に何かあれば、防げる被害を防げなかったことになる。

佐助は、ほんの少し頬を引き締めて、そちらへと急いだ。


 * * *


佐助がその場へ到着したのは、鉄砲の音がしてからは、そう経っていなかった。

――だが、自らの予想のどちらかと言えば、最悪に近い結果が、目の前にあった。

あたりには血が飛び散り、頭や首を鈍い刃物で切られてつぶされた4人の男と、もう1人、見覚えのある男が全身に刀傷を受け、真っ赤に染まった状態で倒れていた。
……そして、最も出血が酷かった、らしい、腹部の傷を必死で抑える少女。

戦になれている佐助にはなんともないが、そうでなければ思わず目を背けたくなるような惨状にちがいなかった。

少女は、たった今、絶命したのであろう男の死を信じたくないのか、傷口を抑える手を離そうとせず、そして、必死に男に呼びかけていた。

「――さん! お父さん!!」

あのときの猟師の娘であることが、一瞬で理解できた。

娘の着物の乱れや土で汚れた様子から、ここで何が行われようとして、結果、何が起こったのかはすぐに把握できた。

佐助は自分に、ふざけてではない自嘲が浮かぶのを感じた。

すぐに、現在のしのび装束から、先ほど茶屋の老婆に対応した町人風の形に変装すると、わざと足音を消さないように、少女の下へと近づいていった。



 * * *



――ガサリ、と、地面を踏みしめる音が聞こえた気がして、菜香はそちらへと顔を向けた。

一瞬、のぶせりの仲間かと思った菜香は、ビクリと体を震わせたが、相手が町人風の男であることを理解し、そして同時に体の力が抜けるのを感じた。

「――血が、止まらないの……。どう、したら、止まる?」

か細い、震えるような、いつもの自分の声からは想像できないような、弱々しい声だった。

男は、菜香に、痛ましそうな表情を向ける。

「……血、早く止めないと、お父さん、死んじゃう。」
「…………。」

男は、無言のまま、菜香とカゴ吉の方へとまっすぐに歩いてくる。
味方じゃないかもしれない、という考えは、浮かんでこなかった。

誰でもよかった。

誰かに、ただ、すがりつきたかった。

「っ……。よ、呼んでも、返事、してくれないの。」
「…………。」
「いつもなら、私が呼ぶと、すぐに返事して、くれる、のに。」
「…………。」
「――泣いて、たら。頭、撫ぜて、く、くれる……のに……!!」

ぼろぼろとこぼれる涙は、全然止まらない。
視界が涙でもう、殆ど見えなくて、涙をふかないといけないと思うのに、怖くて、傷口を抑える手を離すこともできない。

男は、菜香のすぐ近くまでくると立ち止まり、膝をついた。
そして、菜香の頭をそっと撫ぜてくれた。

――暖かい、と、思った。

カゴ吉からは、どんどん失われていく、暖かさ。

菜香は、まるで自分の体温が下がっていくかのような錯覚に陥り、体が寒さに震え、ガチガチと歯が鳴り出した。

「――助け、て!!」
「……ごめん。」

男は、まるでどこかが痛むかのように、顔をゆがめた。

そして、菜香の涙を手ぬぐいでぬぐい、カゴ吉の血で真っ赤に染まった菜香の手を、自分の手が汚れるのも構わず、そっと握った。

「――もう、血は止まってる。」

わかるだろ?

男の言葉に、せっかくふいてもらった涙が、また、溢れた。
男の手が、そっと菜香の手をカゴ吉の傷口から離す。
菜香は抵抗せず、されるがままに離した手を、呆然と見ていた。

――真っ赤。

綺麗な赤。

カゴ吉さんが生きていた証の色。

――もう、二度と会えなくなったカゴ吉さんの――。

ふうっと、体から力が抜けていくのを感じた。

今は、何も、考えたくなかった。

だから、菜香は、全ての思考を、放棄した……。



≪続く≫



************************************


佐助 VS 政宗 の決着はなしで(^^;)

佐助を見失った政宗は、怒髪天をついていることでしょう。

…そのうち、再登場する…予定。。。


当初の予定では、政宗さんを「最低」な人に仕立て上げ様かと思ってたんですが。。。

結局結構好きなキャラなんで、ちょっと無理っぽいかな~と、注意書きからその旨を消してみました。
…そのうちその設定が復活したらごめんなさい。。。







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最終更新日  2008.09.18 13:31:50
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