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テーマ:ゲームや漫画の二次創作(39)
カテゴリ:【小説】時の迷い人
================================================== こちらは『戦国BASARA(2)』の世界にトリップ!の ドリーム小説(名前変換なし)です。 ●キャラのイメージを壊したくない。 ●ドリーム小説は受け付けない。 そういう方は、読むのをご遠慮ください。 読まれた後の苦情はうけつけません。 ================================================= 【時の迷い人】~8~ 菜香は、明るい光がまぶしくて、眼を開けた。 焦点の合わない目で、しばらく天井をぼんやりと眺めていたが、何かを思い出すよりも先に、涙がつーっと流れていくのを感じた。 そして、その涙の理由を思い出す。 いきなり現れた菜香を、本当の娘のように可愛がり、その命までかけてくれたカゴ吉を、自分は何も出来ずに死なせてしまったのだ。 悲しくて、悔しくて、涙が止まらなかった。 そして、泣くことしかできない自分が、たまらなく嫌だった。 声を立てることもなく、ただ涙を流すだけ流し、ようやく落ち着いてきた菜香の耳に、廊下を走るような足音が聞こえてきた。 そこで、やっと菜香は、自分がいる場所に目を向けた。 日当たりのいい、広い和室だった。 上品な調度品に、綺麗な襖絵、一つの破れもない障子。 そして、カゴ吉と暮らした家にあった布団より、ずっと柔らかな布団。 菜香はそこに寝かされていた。 見覚えがないものばかりではあったが、一瞬、自分の家――時代に還れたののだろうか?とも思ったが、部屋の隅に置いてある行灯と、普通、天井に下げられているはずの電灯がないことから、過去の時代のままなのだろうと、少し期待をしてしまった自分に思わず自嘲した。 その瞬間――。 バッと、勢いよく、一枚の障子が開かれた。 そこから見えた庭は、京都のお寺で見たことがあるような、綺麗な和風庭園だった。 (綺麗だな~。) なんてのんきなことを思った後、ハッと気付いて、障子を開けた人に視線を向けた。 そこにいたのは、菜香より2、3くらい年上かと思われる、茶色っぽい、全体的にはねた感じのする髪を、後ろ部分だけ伸ばしているという不思議な髪型の青年だった。 顔の美醜を言えば、かなりカッコイイ部類に入ると思われたのだが、それ以上に目を惹いたのはその表情だった。 あんぐりと大きく開けた口と、目。 明らかに、目の前の状況に驚いている……らしい。 が、この場合、普通、驚くのは自分の方ではないのだろうか?と、菜香が首を傾げた瞬間。 「さ……。」 青年がびっくりした表情のまま、何かを言いかけた。 「『さ?』」 思わず聞き返した菜香の声は、おそらく青年には届いてはいなかっただろう。 次の瞬間に青年から発せられた声のあまりの音量に、菜香は思わず耳をふさいで目を閉じて、身を縮こまらせてしまった。 「佐助――!!!!!!! 破廉恥でござる――!!!!!!!」 一体、彼は誰で、『佐助』とは誰で、何が破廉恥で、何よりここはどこなのか、とりあえず誰かに説明して欲しい。 クワンクワン言う頭を押えながら、菜香は、切実にそう思った。 * * * 青年のその家?中に響き渡るような大音量の叫びに呼ばれたのか、「ハイハイハーイ。」とのんきな声で返事をしながら、青年の後ろから1人の男性が現れた。 青年は、明らかに硬直しているらしい上司を無視して、部屋を覗き込んだ。 部屋の中には、自分が寝かせた少女が1人、布団の上で不安そうな顔でコチラを見ていた。 その瞳が少し赤く潤んでいるように見えて、ああ、起きた後にまたないたんだな、というのがすぐに分かった。 それから、少し頭を押えているようにも見えるのは、おそらく上司のあの雄叫びをいきなり聞いてしまったためだろうと推測できた。 「気分はどう?」 問い掛けると、少女はハッとしたように布団から飛び出し、畳の上の正座をした。 寝乱れたままは失礼と思ったか、恥ずかしいと思ったのだろう。 「は、はい。……悪くは、ない、です。」 本当は、泣きすぎてちょっとボーっとしていたところに、大音量の叫び声を聞かされて、頭が少し痛みを訴えていたが、初対面の男の人たちに訴えることでもないかと、菜香はごまかして答えた。 「あ……の、それで、その、ここは……?」 「ここは、武田様のお屋敷、躑躅ヶ館。………知ってる?」 答えてくれたのは、後から現れた、オレンジの髪、顔には不思議なペイント、変に気になるのはその迷彩柄の服装をした青年だった。 おそらくこの人が『佐助』さんなのだろう。 時代を考えると何か、どこかおかしい風体の人だと思ったが、重要なのはそこではないと、菜香は違和感を意識から追い出した。 「た、武田様の……?」 何故自分がそんなところのいるのかわからなくて、菜香は困ったように顔を曇らせた。 「……そう。俺が連れてきた。」 「え……と、どうしてですか?」 「……君の――。」 言いよどむ『佐助』さんに、どこかで会ったことがあるようなそんな気がして、じーっと見つめて、ふと気付いた。 全く似ていないような気もするし、似ているような気がした。 ――あの時、側にいてくれた町人風の男の人に。 「……お父さんが死んだとき、間に合わなかったからね。」 その言葉で、ああ、やっぱり、と、菜香は納得した。 「……あの時、側にいてれた人、ですね。……すがりついたりなんかして、すいませんでした。」 深々と頭を下げる菜香に、佐助は慌てて顔を上げるように言ってきた。 「謝るのはこっちの方だって! ……あののぶせりは、俺が始末をつけるはずだったんだから!! ……間に合わなかった、けどね。」 佐助の言葉に、全く怒りが感じられなかったとは言えない。 けれど、元を返せば、何もかも全てが自分のせいなのだ。 止まったはずの涙がまた、溢れてきた。 「い、いいえ! 私が……。いな……れば……、よかった……!! ……そう……れば、……は、死ななくてすんだのに!!」 悲鳴をあげるようにそう叫んで、うつむいたまま涙を流す少女に、今まで固まっていた茶髪の青年が、慌てたように叫んだ。 「は、話はよく分からないが! お主を守るために父御が命をかけられたのだろう!? では、父御はそなたを守ることができて満足できたはず!! 自分を責めるものではないぞ!!」 「旦那、良いこと言うね~。……って、そのとおりだよ。間に合わなかった俺が言うことじゃないかもしれないけど、君のお父さんは、満足そうな顔をしてたじゃない。……君がそんなことをいうことが、お父さんは悲しいと思うけどね。」 優しい言葉を掛けられても、心からうなずくことができなかった。 涙が止まらなくて、顔すら上げれず、ただ、首を振ることしか出来なかった。 しばらく待ってみても一向に泣きやみそうにない少女に、おろおろとするばかりの上司はまあ置いておいて、佐助は口を開いた。 「で、これからなんだけど、せめてものお詫びとして、ここで暮らしてもらうことになったから。」 その言葉に、首を振るばかりだった少女が、ピタリと動きを止めた。 「……え?」 更に真っ赤な目になった少女は、驚いて涙が止まったのか、顔を上げた。 「うん、だからね。君の仕事先の茶屋のおばあさんと相談したんだけど、安全なところで、幸せに暮らして欲しいって言ってたから。」 「で、でも!!」 「ん?」 「ご迷惑じゃ……!!」 生来控えめな性格なのか、欲がないのか、それとも、ただ単に真っ正直なのか――。 「迷惑じゃないよ。第一ね、君の住んでた家、見させてもらってきたけど、あそこじゃ、女の子1人じゃ住めないでしょ。」 「…………ですが――。」 確かに言われて見ればそうだ。 流石に、この3年で火の起こし方や、昔ながらの道具の使い方は大体覚えたつもりだが、獣への対処の仕方、食糧の調達の方法などは、知識としては「知っている」程度のものでしかなかった。 菜香は、言いかけてぐっと言葉をこらえる。 森の中での生活は、カゴ吉がいたから成り立っていたのだ。 自分のような非力で無知な子供が、1人で暮らしていけると豪語できるほど、菜香はおろかではないつもりだった。 言いたいことが、伝えなければならないことが無いわけではなかった。 けれど、今、ここを追い出されることは、野垂れ死にに行くに等しいことだと、菜香は思った。 ――カゴ吉に助けられたこの命を、粗末にするわけにはいかなかった。 それに、いつか――。 もし、いつか、元の時代に還りたい。 ――還れるまで死にたくない。 ずるい考えかもしれないけれど、ここでうなずいたら、少なくても「住」と「食」は保証されるのだ。 それは、何より重要だった。 菜香は、正座をしたまま、両手を畳につけて、頭をふかぶかと下げた。 「……何もお返しすることなどできませんが、お言葉に甘えて、お世話になりたいと思います。よろしくお願いします。」 そんな菜香に、『佐助』さんは、ぽんぽんと、頭を優しくなでて、「そうそう、お子様はそれでいいんだよ。」といってくれた。 そして、もう1人の青年も、「そうでござる! 困ったときはお互い様というではないか! それに、お館様は懐のとても大きい方! そなた1人くらい屋敷に置くこと、快く承知くださる!!」と、胸を張って、嬉しそうに、そして、優しく菜香に言ってくれた。 2人の優しさが嬉しくて、菜香は、先ほどとは違う意味で涙がこぼれた――。 【続く】 ************************************ 書きかけて、中々書き進まなかったのが、やっと1話分できたのでアップしました。 ヒロイン?がようやく佐助と幸村(名前出てないし。)に出会いました。 ……幸村の「破廉恥」は、やはり、幸村ファンとしては外せないところでしょう!!(笑) ま、使いどころが間違ってるような気もしないではないですが。 さてさて、今後はどういった方向で進めようかな~♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.11.10 10:14:48
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