精神病との闘い2
精神病の家族がいるということは必ずしもマイナス面だけではなかった。現実と空想の狭間にいる人間が間近にいるとものすごく注意深い言動を取らなければいけない。相手に決して刺激を与えてはいけない。それは武道の間合いに似ている。ギリギリのせめぎ合いだ。その精神的な戦いは僕の恋愛において大いに役立った。そして、何よりも人間の心が壊れる寸前の、あのヤバさ。それを肌で感じることが出来たことは今の僕の能力に大きな影響を与えている。たまにいるのだ。「あ、ヤバい」と思うような人が。そして生徒が。ヤバいと言っても、ほんの少しだけ。まだ誰も気付いていない。けれど、確かにある。そんな歪みが僕を惹きつける。というより僕に引き寄せられているのかな。そう思ってしまうくらい、僕の周りにはヤバい人が多かった。ではそういう人たちと「普通」の人とで何が違うのか、正直言って、今でも良く分からない。ただ言えるのは、その「差」は本当に紙一重だということ。人間はまるで綱渡りのようにバランスを取りながら生きている。いつ、誰が、どこで落ちたって不思議じゃない。実は全員が結構、ヤバいのかもしれない。自分が気付いていないだけで。あるいは気付いていないフリをしているだけで。「強い人間」とはただ自分が弱いことを知っているだけの人間に過ぎない。