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カテゴリ:医療行政
前回出したような案を制度に反映させる場は、現在、医療側は持っていません。医師会とは、建前は医師全員の会であっても、実質は開業医の利権団体で、医療全体を見据えた意見を集約する能力も意志もありません。経済界や建設業界には諮問会議、農家には協同組合があり、それなりに機能していますが、医師が現場の窮状を訴えるための団体は無いのです。
医師の側から忙しさや現場の厳しさ、待遇の悪さについての意見を述べると、「それでも医者か」「税金で賄ってもらっているからやるのはあたりまえだ」「じゃあなぜ医者になったんだ」「庶民はもっと忙しくて貧乏だ」という反論が必ずといっていいほど出てきます。いちいちご尤もで、我々自身、そう思っているからこそここまでの悪待遇に文句を言わずに頑張ってきました。医師という職業はやりがいがあり、患者さんが感謝さえしてくれさえすれば、かなり厳しい状況でも耐えられるのです。しかしながら、耐え切れなくなった医師が出始めている事自体が、現在の現場が医療崩壊の一歩手前であることを暗示しているのです。 あなたがサラリーマンなら、良い仕事が出来たとき、まわりに「出来て当たり前」といわれてうれしいですか? あなたが専業主婦なら、「養ってもらっているから、子育てと家事は完璧にこなせて文句なぞ言うな」と言われて当然ですか? あなたが公務員なら、「税金で養ってもらっているから、24時間働け」といわれてできますか? あなたが自営業なら、「お金がもうかるのはけしからん。悪徳商人だ」と言われて納得いきますか? あなたが職人なら、いい仕事でも悪い仕事でも値段が同じでやる気がでますか? 医師は、「成功して当たり前で、完璧にこなせて文句を言うことは許されず、保険診療は税金から賄われるため、勤務医なぞは24時間利用することを求められ、開業して少しでも余裕ができると悪徳医師と呼ばれ、仕事に対する料金は上手下手に関わらず同じ」なのです。 そういったことを、よく考えて欲しいのです。 医療現場の忙しさは、明らかに医師の数が少なすぎることが原因です。そのせいで医師、看護師はぎりぎりまで働き、それでも患者さんに満足のいく治療が行き渡らない。その責任を、目の前にいる医療者にぶつけることは厳に控えていただきたい。諸悪の根源は医師数を抑制し、医療費を抑制し続けている厚労省、財務省、国にあるのです。 本来、医師と患者は、共に病気と闘う仲間であるべきです。我々医療者は患者さんを大事にする精神を持っています。ただし、無尽蔵ではありません。不足している医療資源を、もっとも困っている患者さんから順に注入せざるを得ない状況を、一人でも多くの人に知っておいて欲しいと思うのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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