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カテゴリ:医療行政
 さて、前回のお話では、混合診療が導入されると良いのか悪いのか、どちらが正しいか判断に迷うというところでした。新聞や医療系ブログ、その他いろんなところでこの問題は議論されています。医師の中にも賛成派、反対派がいて、専門家の見地からも意見が分かれていることが判ります。
 head&neckの立場は、一部分で賛成ですが、政府の諮問機関が導入しようとしている混合診療には反対です。その理由を以下に述べます。

 医療を産業として捕らえるなら、非常に専門性の高い産業です。その内容は、医療を生業として初めて理解できるもので、一般の方の知識と、専門家の知識にこれほど隔たりのある分野はそうはありません。さらに、その結果が人の命に直結することもあり、生半可な知識はかえって有害なことさえあります。
 現在、日本の保険医療は政府の定めた「保険点数」というもので厳密に管理されています。皆さんが医療の値段を気にせずに病院にかかれるのはこの制度のおかげで、治療が終わった後には少なくとも決まった額の請求のみで、法外な治療費をとられることはありません。つまり日本では、治療という商品を購入するにあたって、それが正しい値段かどうかを考えずに済むシステムになっています。
 技術というものに、値段をつけるのは非常に難しいことです。その盲点を突いて、国は医療者の技術料を不当に低く抑え、目に見える薬価や器械は値段が高いという構造になっています。30兆円を超える日本の医療費のかなりの部分が、こうした理由で製薬会社や医療機器メーカーに流れているのです。まずは、この構造を改善しないと、国民医療費は下がりません。それに、混合診療を導入すると、もともと不当に抑えられている技術料が上がることが予想されるだけでなく、高価な材料や器械を使えば、その分の請求が患者負担になることが考えられます。すでに歯科の分野ではそうなっており、例えば保険の利く金属の歯は安いが、金歯やセラミックの見栄えのよい歯は高いといった現実はご存知だと思います。概算ですが、保険で使える前歯は5000円、セラミック製で普通の歯のように見えるものは5万円超です。それぐらいならと思うかもしれません。ところが、心筋梗塞のさいに使うステントや、脳動脈瘤につかうコイルは、高いものだと50万円以上するものもあります。head&neckの分野でも、人工の骨パテは一回の手術で使用する量を値段にすると30万円を超えます。こういった高価な材料を使わずに治療をするというのは、現在の医療水準から10年も20年もさかのぼることになり、当然治療成績は落ちます。ですから、いますぐ混合診療を導入して、患者さんに選んでいただくといっても、自分の命がかかっている以上は高いものを選ばざるを得ない状況が生まれます。
 さらには、手術などの治療の値段についても、妥当かどうか判断する材料が、患者さんの側には極端に少ないのです。これは情報開示以前の問題で、医師と同等に判断するためには医師と同じか、それに近い専門知識が必要なのですから、当たり前のことです。逆に言うと、皆が医師の技術料を正しく評価できるなら、皆医者になれます。結局のところ、医師や医療の技術の評価を適正に行えるのは、医療者以外にないのです。それに加えて、日本の医師数は諸外国に比べて極端に少ないので、腕のよい医師に患者が集中すると、否応なしに医師の奪い合いになり、その医師の手術料が高騰する可能性があります。
 混合医療を導入する前に、まずは、ばかばかしいほど高い医療機器の値段を適正に下げ、諸外国よりも高価な薬価を抑えなければなりませんが、こういった会社には天下りの職員がいますから、なかなか切り崩すことが出来ないということを、一般の皆さんは知っていおいたほうがよいと思います。

 現在の医療制度が限界であることは明白です。以前、head&neckがまだ研修医の頃、ある会社の社長さんが入院され、こんなことを言っていました。
「わしが若い頃から苦労してお金を溜めたのは、病気になったときに良い医者にかかっていい治療を受けたいためだ。なにも他の人のが治療を受けるのを邪魔しようなんて思っちゃいない。なのに、なんでそれが許されないんだ?」
確かに一理あるとは思っています。しかし、現在の日本の医療の構造は、それを許してなおかつ皆が平均の医療を受けれるような制度になっていないのです。

 混合診療を無理なく導入するためには、上に述べたような問題を解決してからでないと、アメリカ医療のような、金持ちだけが医療の恩恵を受けられる社会になってしまうと思うのでした。
 





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最終更新日  2007.11.26 22:25:16
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