患者への呼びかけに「患者様」という言い方をする医療者が多々居ます。head&neckが医者になった十数年前はこんな呼称はありませんでした。つまり、ここ10年の間に出てきた呼び方であることは間違いありません。この呼称、最初に言い出したのは看護系の偉い人だったと記憶していますが、その理屈は「医者はお医者様と呼ばれるのに患者は呼び捨て。これでは医師と患者の間に上下関係ができてしまってよくない。デパートだってお客様と呼ぶではないか。」といったようなことを述べられていたように思います。head&neck自身は、どうにも正常な日本語感覚を逆撫でする語感なので、どうしても使いたくありません。患者の名前を呼ぶときは「鈴木さん」等、「さん」付けです。紹介状にも「患者の鈴木様」と書いたり「患者さん」と書いたりはしますが、「患者様」とは書きません。なんでこんなに違和感を覚えるのか?気になったので調べてみました。以下、抜粋です。
金田一春彦:「日本語を反省してみませんか」角川oneテーマ21,p12-13,2002
敬語の勘違い:「さま」という言い方
『言葉を丁寧なかたちにしても、けっして丁寧な意味にはならないという例はほかにもある。病院へ行くと、「患者さま駐輪場」「患者さま待合室」と書かれていることがある。 「患者さま」と言われるのは何となく落ち着かない。なぜなら「患者」という言葉自体がすでに悪い印象を与えるため、いくら「さま」をつけてもらってもうれしくない。「病人さま」「怪我人さま」「老人さま」など、いくら頑張っても敬うことにならないのである。「ご来院の方」「外来の方」などというように変えたほうがいいと思われる。』
金田一先生は、まだマイルドに述べておられますが、たとえば「病人様」「老人様」「障害者様」などという言葉は、しばしば揶揄するときに用いられます。
日本人として生きてきて、まず最初に「患者様」という呼称を耳にしたとき、違和感を覚えたのはhead&neckだけでしょうか?なんとなく変だな、と思った方、あなたは正しい日本語の感覚を身につけています。きつい言い方をしますが、「様」をつけるだけで丁寧になっていると考えた人は、物事を表面だけで捉えて本質を考える能力を欠いていると思うのでした。
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