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カテゴリ:医療制度
年も明け、病院は明日から通常営業です。今年は医療全般の崩壊が少しはとどまってよい方向に動くように願っています。
さて、あちこちの医療系ブログでも新聞でも、医療費の問題は色々と取り沙汰されています。皆さんが病院に払うお金は果たして高いのか、安いのか。医師や医療者のブログでは、主に海外の値段との比較でもって、日本は極端に安いという論理展開が多いようです。大手新聞、テレビ等のマスコミでは、サラリーマンとの給与の比較や医療総額、開業医の収入総額でもって論じ、医師は高給取りであるという世論操作に必死である印象を受けます。果たして、医療を産業として捉えた場合に、儲かる商売なのでしょうか? 簡単な例を紹介しましょう。 あなたに、甲状腺の腫瘍ができて、入院して手術することになりました。甲状腺手術(半切)の値段は52200円です。これは、手術が簡単でも難しくても、腫瘍が大きくても小さくても、術者が上手でも下手でも日本国内全国一律の値段です。現在、日本の制度では、この値段は手術に対して使用した材料費込みで、手術に関してはこれ以上のお金を請求することができません。 それに対し、あなたに手術をする際に使った医療用具や消耗品の値段は以下のとおりです。ただし、(判りやすくするためにかなり単純化してあります。) 術前に点滴をとるための用具代:アルコール綿一枚20円 点滴留置針130円 輸液セット400円 薬剤費約2000円 固定用テープや注射器、その他の消耗品で約3000円。 手術の費用:滅菌布800円×5=4000円 術衣1600円×4=6400円 滅菌手袋300円×4=1200円 手術室用帽子、マスク等300×4=1200円、術前後に使用する消毒薬等の薬剤費2000円、心電図の電極、電気メスの対極版、メスの刃、縫合針、縫合糸、滅菌ガーゼ、創被覆材等の消耗品で約10000円。 上の2つを合わせて約30000円ですね。さらに、手術室を1時間稼動させる純粋な光熱費だけで1時間当たり1万円以上かかるのです。甲状腺の手術は、たとえばhead&neckがやると普通は2時間弱です。手術室に入って、全身麻酔をかける時間、覚ます時間を考えると、よっぽど手際よくやっても手術室は3時間半稼動しますから単純計算で35000円かかりますね。 つまり、甲状腺手術を1件やると、65000円の純粋なコストに対し、それに対する値段は52200円。13000円の赤字になります。しかも、これらの値段には、医師、看護師の人件費が全く含まれていないのです。 上に述べた値段には、いろんな問題点があります。ただ、現状の医療の技術料が極端に低く押さえつけられているという事実はおわかりになると思います。 次回につづくのでした。 ←参加しています。ポチっと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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