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カテゴリ:医事紛争
2月13日 毎日新聞より
東京都杉並区で99年、のどに割りばしが刺さって死亡した杉野隼三(しゅんぞう)君(当時4歳)の両親は13日、杏林大付属病院(三鷹市)側に対する賠償請求を棄却した東京地裁判決(12日)を不服として控訴した。判決は「割りばしが刺さったことによる脳損傷の予見は不可能だった」と担当医の過失を否定していた。【北村和巳】 まず、このお子さんのご冥福をお祈り致します。 あちこちで取り上げられていて、詳細については省きますが、被告の医師は、head&neckと同じ科であり、とても他人事とは思えません。 この損害賠償請求が妥当かどうか。現時点での裁判所の判断は「妥当でない」となり、遺族は「子供が亡くなったのは医師と病院のせい」と思っているので、損害賠償は妥当と考えているのでしょう。少し前にアメリカで、「コーヒーをこぼして火傷したのは売った店のせい」という裁判がありましたが、これと似たものを感じます。 いちおう、知り合いがいますから、直接効いた話や、その他確認した情報をもとに書いてしまいますが、もし間違った情報等があれば指摘いただきたく思います。 まず、この親御さんご自身による事故当時の様子が、小学館文庫「割り箸が脳に刺さったわが子」と「大病院の態度」につづられています。それを読むと、親は事故のとき子供の様子を見ておらず、転んだときの状況をはっきり説明できていないようです。はっきりした麻痺や意識障害などの神経症状もありませんでした。 さらに、保護者が子供を観察しており、割り箸が刺さった。証拠はこの折れた割り箸だと医者に呈示できていたら医者も診断の手がかりになったはずです。 しかし、杏林大学の救急室でそのような訴えは無かったようです。 診察時の様子は、原告側はぐったりしてよほど重症と思ったと述べられていますが、杏林大学の医師のカルテ、看護師の記載、さらには搬送した救急隊の記録が公開されており、それによると患児は目を開けたりうなずいたりしており、看護師のエプロンのひもにしっかりとつかまっていたようです。また、看護師が抱きかかえようとすると、患児はそれに応じ、手を広げて、だっこをせがむ姿勢をとっていたそうです。 この意識状態の記録について、原告側は「改竄ないし書き足しではないか」と主張していますが、現時点では明らかに矛盾する記録はなく、これだけ違う職種、違う場所での記載がすべて改竄されることは考えにくいでしょう。 その他、原告側の記した事故当時の様子と、複数の人間が書いた事故当時の様子がずいぶん食い違っていて、やや信憑性に欠ける感は否めません。 そういった記録をすべて考慮し、裁判所の判決が出たのでしょう。 厳しいことを言えば、子供が事故にあったとき、その状況を正確に把握して医療機関につたえるのは、親の役割であり、義務なのです。幼い命が消えたことはきわめて残念で悲しいことですが、それは「割り箸が頭蓋底を貫いて脳に刺さった」ことが原因なのであって、「医師のせい」ではありません。 いま、この子供のためにできることは、静かに冥福を祈って、保護者とは子供を保護観察して子供の様子をしっかりと医者に呈示するべきという当たり前のことを啓蒙することであって、9000万円もの損害賠償を請求することではないと思うのでした。 ←最近ランクが低迷しつつ参加中。・・一日一回ポチっと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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