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カテゴリ:医療制度
head&neckのお気に入りにも登録させてもらっている、れい0233さんのブログ(非常に鋭い意見と、常識的な見識をお持ちで、head&neckもよく訪問して拝読させてもらっています)に、以下のニュースが取り上げられていました。
「がん」主治医に伝わらず、厚木市立病院が治療ミス(2008年2月22日 読売新聞) 神奈川県の厚木市立病院(田代和也院長)で、胃がんの診断結果が主治医に伝わらず、50歳代の男性患者が1年2か月間も胃かいようの治療を受けていたことがわかった。 男性は昨年5月、転移した肝臓がんで死亡した。病院は21日、「最初に胃がん治療をしていれば命を救えた可能性がある」として、損害賠償金5800万円を支払うことで遺族と合意したと発表した。 病院によると、同市内の男性は2003年6月、吐血して救急搬送された。胃の組織を検査した病理医は当初、胃かいようと診断したが、3週間後の再検査で胃がんと判明した。 しかし、男性は入院から2週間後に退院し、胃かいようの投薬治療を続けていた。04年8月の検査で、当初より進行した胃がんを確認。病院は9月に胃の切除手術を行ったが、リンパ節に転移しており、その後、肝臓にも転移した。 カルテには、病理医による診断結果の訂正書類があったが、その上に別の書類が添付されるなどしていたため、主治医は気付かなかったという。 田代院長は記者会見で「あってはならないミスで、患者さんに大変申し訳ない」と陳謝した。 非常に残念な出来事で、ご遺族も無念に感じたことと思います。そして、この報道は非常に客観的に冷静に記事を書いていると思います。 この結末について、感情論を排除して考えて見ましょう。 まず、現場にいる立場から考えると主治医にしてみれば「その上に別の書類が添付される」ことは、結果を知らされないのど同じことです。すべてのカルテをいちいちばらして見る訳にはいきません。 病理医は、きちんと訂正して、書類を各部署に送り、自分の仕事を果たしています。 おそらく、「上に別の書類が添付した」のは病棟のクラークさんか看護師さんと思いますが、書類はとめどなく大量に発生していますから、内容は確認せずに貼り付けた可能性が高いと思います。仕事として、書類を各患者のカルテに仕分けしてすばやくさばいていくということをやっているのですから、これもある意味有能であることの裏返しです。 こういう流れの中でのミスを、システムエラーと呼びます。医師個人、看護師、クラークのミスではありません。もちろん、このエラーに関しては二度とあってはならぬことで、予防策が充分検討されるべきであるし、保障がされるべきと思っています。 このシステムエラーから学んで訂正すべきシステムは、 (1)最初の病理と違った結果が出たときは、書類でなく電話や口頭で直接主治医に連絡する (2)病理結果などの診断結果を示す書類を新しく貼り付けする場合、重ねない (3)病理結果の伝票は、必ず(週に一度位の割合で)主治医がまとめて目を通せるようにする などが考えられます。 もちろん、院長先生もおっしゃっているように、「あってはならないミス」です。ただ、医療の中では、ミスは必発することも事実です。このようなシステムエラーの狭間に落ち込んで不幸な結果を辿った患者さんのためにも、また、これに関わった医療関係者のためにも、裁判という手段をもってエラーを医師個人や、医療関係者の責任に帰結することは不毛なことです。患者さんの側にも多大な労力と精神的負担を強いることになります。 スウェーデンなどでは、個人の過失のないシステムエラーに対する保障をする制度があります。個人個人はしっかり仕事をやっており、悪意のないところにも不幸な結果が発生するのが医療であるという考え方から、双方に無用な軋轢を生じさせない評価制度を考えてあるのです。 いま、厚生労働省が立ち上げようとしている「医療事故調査委員会」も、もともとは上記の考え方から派生したものですが、「事故調」とは現場に干渉してすばやく犯人を見つける制度だと勘違いした不勉強なへっぽこ政治家やお役人の手にかかると、内実は全く別のものに変質させられてしまっています。 真面目な現場に対して不真面目で不勉強な政治と官僚。これが今の日本の医療行政の姿だと思うのでした。 最期に、亡くなられた患者さんに、心から哀悼の意を表します。 ←日曜日も参加中。一日一回クリックを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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