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臨床の現場より

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カテゴリ:診療
 普段の診療の中で、口頭での感謝の言葉を頂くことはしばしばあります。面とむかって「ありがとうございました」と言われることは、医師冥利に尽きます。
 たまにですが、お手紙で感謝の意を表現してくださる患者さんが居ます。これまでにそうたくさん頂いたわけではありませんが、こういう手紙は全て手元に残してあります。head&neckの中では、最も大事な宝物の一つです。

 数年前、head&neckは、主に自閉症児を教育している養護学校の嘱託校医をしていました。嘱託学校医は年に一度、診察道具を持って学校に出向き、学校で検診をするということをそのとき初めて知りました。自閉症児の診察は大変です。泣いたり逃げたり暴れたりする患児をなだめすかして、ときには学校の体育の先生に押さえつけてもらいながら全ての生徒の耳、鼻、のどをチェックします。前任の先生は患児をおびえさせぬようにしたのかもしれませんが、失礼ながらあまり熱心に診察をされていなかったようで、診察に行くと、数十人の生徒のうち、半数以上の耳は耳垢で栓塞し、鼓膜が観察できない状態でした。その他、中耳炎やひどい鼻閉で鼻の中がただれている患児もいました。
 放っておけないと感じたhead&neckは、当時外勤に行っていた、養護学校の近くの病院に頼み込み、午後一杯の時間をこの養護学校の生徒のために確保しました。その日は普段の午後の仕事を空け、擁護学校の先生と、小児科の先生、それから病院の男性看護師に協力を求め、20人以上の自閉症児の生徒の耳垢掃除、中耳炎の処置、鼻の処置を行いました。
 生徒たちは学校で診察したときに輪をかけて脅えています。中には走って外まで逃げる子、診察室で暴れて椅子を倒したり器具をぶちまける子、所かまわずつばを引っ掛けて診察を逃れようと必死な子なども居ます。
 全てを終了したときは、大変な疲労と脱力感で一杯でした。それと共に、「もしかしてこんなに怖がらせて、あの子たちにとんでもないトラウマを作ってしまったのではないか?親御さんたちにいい加減にしてくれとクレームをつけられてしまうのではないか?」と不安な気持ちになりました。そのことを、養護学校の先生にお話し、親御さんたちに、もしお子さんたちを脅えさせて傷つけてしまったようなことがあれば謝罪しますと伝えていただくように話しました。
 数日後、養護学校のPTA代表の方から手紙をいただきました。以下はその手紙の抜粋です。(個人情報を伏せるため、一部改変してあります)

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head&neck先生、○×病院の皆様へ

 先日は、私どもの子供たちのために、わざわざ貴重な時間を割いて処置をしていただき、誠にありがとうございました。
 その後に学校の先生と、付き添った親からことの仔細を聞き、事情を知って、改めて感謝の気持ちをお伝えしたく筆を取りました。
 突然のお手紙、お許しください。

 私たちの子供は自閉症という病気を持って生まれ、親以外の一般社会の人たちからはある意味、隔絶された存在です。もちろん、症状には個人差があり、何とか社会の片隅で生きている子もいますが、それは少数派で、多くの子供たちは決まった施設で、理解有る人たちのお世話になっているのが現状です。
 先生や病院の皆様はご存知のとおり、ただの健康診断につれてゆくのもままならず、時に私たち親でさえ、子供の病気を見逃してしまうこともあります。
 子供たちが病気になったとき病院に連れてゆくと、普段と違う環境に脅えたりして、満足に診察を受けるまで待っておれないことも多く、キャンセルして帰ったこともありました。病院や診療所の待合室で大きな声を出したり、暴れるわが子を抑えきれず、私たち親が回りの視線に耐え切れない思いをしたこともあります。

 そんなこともあり、これまで私たちは、病院や医院に気軽にかかったことがありません。個人のお医者さんや看護婦さんを責める気持ちは毛頭ないのですが、私たち自身のほうで何となく引いてしまっている気持ちがあったことは否めません。
 さらには、医療機関に自閉症児のための診療制度が無く、理解を示さないことに、責める気持ちを持ち続けていました。脅え、泣き、暴れるわが子の姿を見る度につらく、責めたくなってしまったのです。

 今回の診察にあたり、子供たちを充分に診るため、たくさんの人数をさいて準備をしていただいたと聞きました。また、先生は特別に普段診療なさらない時間を使って、一般の方々が待合室に居ないときを選んで、私たちに配慮していただいたことも、大変にありがたいことでした。

 先生が、子供たちを脅えさせて傷つけたかもしれないと心配していると伺って、私たちの責める気持ちは、全く独り善がりの考え方であることに気づきました。
 ある意味、責める気持ちは自分たち親自身に対する後ろめたさや、周りの目を気にする気持ちの裏返しであることに思い当たりました。
 大変なことが判りきっているのに、しっかりと検診をしてくださり、更にはその後にもきっちりと診察と治療をしていただいて、今は、先生や協力して下さった病院の職員の方々に、感謝の気持ちで一杯です。
  
 本当にありがとうございました。

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 この手紙を頂いたときの感動は、そう簡単に忘れることはできません。
頑張って良かったと思える瞬間があるからこそ、医師を続けられると思うのでした。


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最終更新日  2008.03.02 16:40:29
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