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臨床の現場より

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カテゴリ:医療制度
 現在でこそ研修医の指導には多くのマニュアルがあり、「やらせてはいけないこと」や、「つかってはいけない言葉」など、いろいろな指導要綱があります。現在の20代半ばの若い新人医師たちの特徴として年長の医師から漏れてくる言葉で欠点を要約すると、「打たれ弱く、手技になると緊張しすぎ、ふてくされやすい」というところで、長所を要約すると「情報収集能力は高く、ものごとを冷静に捉え、変な人情に流されることが少ない」という傾向にあります。
 もちろんいつの時代にも優秀な人材は居り、こちらがびっくりするほど飲み込みの早い研修医も実際に何人も知っていますし、我々が研修医だったころにもからっきし役に立たない同年代の医師も目にしています。「近頃の若いもんは・・」なんて言葉が出るようになってしまうと自分も老いた証拠のような気がして、head&neckはなるべく昔の話はしないように気をつけています。今回は、敢えて研修医の前ではしないhead&neckの若かりし頃の苦労話です。
 
 1年目の夏、head&neckは大学の医局から派遣されて、今居るこの病院の研修医として就職しました。そのころは現在のように全ての科を回る研修制度ではなく、1年目から専門の科の研修を行うシステムで、そのカリキュラムは医局任せで厚生省の横槍はありませんでした。専門研修だけだとやはり救急の場やいざと言うと気に困るので、多くの医局は、新人に最低限の全身管理技術と知識を身につけさせるため、3ヶ月から半年くらいの期限で、救急科やICU,麻酔科にお願いして研修を義務付けていたところが多いようでした。head&neckの医局も、専門医を取る前までには半年間の麻酔科研修を市中病院で行うことが義務となっており、この期間は耳鼻科を離れて専ら麻酔ばかりかけることになっていました。
 head&neckは、9月から当院の麻酔科に転属となりました。そのころ、うちの病院の麻酔科医は2名。朝から晩まで忙しく働きづめの超人たちでした。2名で一日20件を越す麻酔管理症例をこなしているツワモノで、厳しい現場に居るだけに指導もスパルタでした。もともと耳鼻科の先生たちは優しく、あまり声を荒げるタイプではなかっただけに、あまりのギャップに最初はかなりの戸惑いを感じました。
 麻酔科の仕事にはかなりの特殊性があります。症例や方法によりますが、全身麻酔をかけるというのは、ただ患者さんを眠らせることではありません。手術をするために、患者さんの意識を無くし、動かなくし、痛みをとることが必要です。そのために様々な薬や手技が必要になってきます。研修医がまず最初に当たる壁がこの技術です。
 たとえば、点滴一つにしても、これが入らなければ薬は投与できません。気管内挿管が出来なければ患者さんに呼吸させることができません。腰椎穿刺が出来なければ腹部の除痛が出来ません。薬の知識がいくらあっても、手技が出来なければ全くの役立たずなのです。
 その頃の直属の上司、Y先生は厳しい人でした。一つでも失敗をするととことん追及され、存在すら否定されるような叱られ方を幾度となくされました。

Y先生「お前、なんで点滴失敗したんだよ?」
head&neck「すみません。」
Y先生「やる気ないんだろ!?」
head&neck「い、いえ、やる気はあります。難しくて・・」
Y先生「やる気あるなら一発で入るはずだろ?」
head&neck「・・え?」
Y先生「さっき俺が点滴いれたの見てたか?」
head&neck「・・はい。」
Y先生「じゃあその通りやれよ。なんで入んねえんだよ!?」
head&neck「あ、あの・・・その・・・」
Y先生「入んねえってことは、ちゃんと見てないんだよ!ちゃんと見てないってことはやる気がないんだよ!!やる気ないんなら帰れ!!!」
head&neck「・・」(絶句)

ここで帰るわけには行きません。今度はちゃんと点滴を成功させてやる、と思い決めて次の症例に向かいます。

Y先生「はやく点滴とれよ」
head&neck「はいっ!」
⇒なんとか成功!
Y先生「麻酔器チェックしたか?」
head&neck「はい。」(朝のうちに全ての手術室の麻酔器はチェックしてあるので)
Y先生「よし導入するぞ」
⇒麻酔導入する。よしうまく挿管もできた。・・あれ、空気漏れ!換気できない!!
head&neck「!!!・・換気できません!」
Y先生「どうすんだよ!?」
head&neck「あ、あの・・」(相当あせっている)
Y先生「原因探せよ、早く!」
head&neck「は、はいっ」
⇒送気回路のチューブが抜けているのを見つける。チューブをはめなおしてやっと一息。
Y先生「だから麻酔器チェックしたかって聞いたろ!導入前にやったのか?」
head&neck「いえ・・すみません」
Y先生「さっき俺が抜いておいたんだよ」
head&neck「え・・!?」
Y先生「朝と同じ状況がずっと続いているわけないだろ、馬鹿!」

・・それ以来、くどいほど導入直前には麻酔器のチェックをするようになるhead&neck。

 こんなことを1日何回も繰り返され、仕事が終わる頃にはすっかり磨耗しきっていました。とにかくY先生に怒られるのが嫌で、上手くなろうと必死です。2ヶ月もたつと、リスクの少ない患者さんの麻酔は普通にかけれるようになりました。麻酔研修が終わる頃にはこのまま麻酔科医になろうかなと思ったほどで、最期にはY先生もわざわざ送別会を開いてくれました。
「短期間で上手くしてやるにはこの方法しかないんだよ。意地悪してごめんな」と仰っていました。

 現在、こんな方法で若手を鍛えたらそれこそ10人中8~9人はやめていってしまうでしょうが、head&neck自身の経験では、手技というのは「褒められるから上手くなる」より、「叱られるのが嫌だから上手くなる」ほうが早いような気がしています。
 もちろん、ある程度医師としての基礎が出来ている人にとっては侮辱にあたりますから、状況によりけりですが、若くて叱られ慣れているうちに技術を伸ばしておくことは重要です。

 現在の研修医たちの教育指導方法をみて「カーリングとおんなじで、周りが必死でブラシでこすって高い点数のところに持っていくんだよ」と言っていた先生がいましたが、言いえて妙です。それはそれで安全のために必要ですが、10年、20年たって、彼らがどんな風に育っていくのか、やや不安に思う事もあるのでした。

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最終更新日  2008.07.23 12:40:49
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