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カテゴリ:医療制度
医療現場では、医師や看護師だけでなく、色々な職種の人たちが働いています。英語では医療一般のことをmedicalと形容しますから、コメディカル(co-medical)というのは医療関連の職業一般を意味します。CE(clinical engineer、臨床工学士)もそのうちのひとつです。head&neckの病院では、やく30名のCEさんたちが働いています。
ひと昔前の病院では、職員は医師、看護師、臨床技師がコメディカルのほとんどを占めていました。医療で行う行為は注射、手術、投薬、検査等が主なものなので、その多くをこれらの職業の人間が分担して行っていれば充分だった時代です。ところが、機械工学の進歩によって複雑な医療機器が登場するようになって来ました。古くは人工呼吸器から、最新の医療用ナビゲーションシステムまで、現在の医療現場で使用されている医療機器は多岐にわたります。こういった複雑な医療機器を扱うには医師や看護師のような人種より、機械の専門家の方が適しています。そんなニーズにこたえてCEという職業が登場してきました。 head&neckの科はもともと医療用の器械の種類は少なかったのですが、近年鼻の内視鏡手術が普及してから、光学機器も多用するようになりました。大学病院などではこのCEさんが居ないため、自分たちで操作しなければなりません。転勤の激しい職場で、同種の機械でも少しずつ操作の詳細が違い、戸惑うことがよくありました。携帯電話を機種変更すると操作がわかりずらくなるのと同じようなものです。録画したはずの映像が録画されていなかったり、動作が不安定だったり、無理にいじると壊れることさえあります。精密機械なので修理にも時間とお金がかかります。こういった出費は病院にとっても馬鹿になりませんし、何より貴重な診療や手術の時間を無駄にしてしまいます。ところがCEさんがいるとこういったトラブルが極端に減ります。「録画してください」「顕微鏡の動作をもう少しやわらかく」「光源を少しだけ暗く」といった術中の要求にも即座に応えてくれますし、簡単な故障や不具合ならばその場で修理してくれます。彼らの存在は現場を円滑に進めるだけでなく、医師や看護師の能力を存分に引き出す役割があります。 ところが、公立病院でこういったCEさんをたくさん雇っているところは少ないのです。上でも少し述べましたが、医療機器の移動、操作は多くは医師(研修医)の役割です。もちろん、自分がしようする機器の詳細を知っておくことは必要で、その意味では自分たちが研修医の時にこき使われた経験も役に立っていないとは思いませんが、やはり患者さんのことや医療の質を考えると医療機器専門の人間がいた方が効率的です。基本的な仕組みは彼らに教われば良いだけのことです。かつて大学病院から今の病院に転勤したときには、公立病院と私立の大病院の効率の差をまざまざと感じましたが、その多くはコメディカルの質の高さからくるものです。 ひとりひとりは大学病院でも私立病院でもまともな医師であり、看護師であり、コメディカルです。それが集団となると高品質な病院と低品質な病院に大きな隔たりができてしまう。この格差の原因は一体何なのかと考えてしまいます。各論は色々あるとは思いますが、一言で言うとすれば病院の上層部の人間に仕事をする環境を整える気概と能力があるかどうかということかもしれません。 そんなことを考えつつ、さらにはよく働いてくれるCEさんに感謝しながら、今日も手術をするのでした。 ←またまた苦戦中、一日一回のぽちを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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