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カテゴリ:診療
head&neckが現在勤める病院の手術室は2階にあり、廊下には窓もあるので外の様子がわかりますが、以前勤めていた病院の手術室は地下でした。どちらの病院にいても、一日中手術室にこもりきりになることはしばしばあり、条件はまったく変わらないのですが、地下で仕事をしているとなんとなく憂鬱になることがあり、このあたりは人間の心理の不思議さを感じます。
手術室というのは基本的に密閉構造になっていて、空気の流れも計算してあります。最近の設計では、空調によって手術室の中は外側よりわずかに気圧を高くして、内から外へ空気が流れる仕組みを作って、外から雑菌などが入るのを防ぐようになっているのです。このあたりは東京ドームみたいですが、人の出入りがあるので完璧ではありません。また、手術衣は密閉性が強く、手術室の中はエアコンの設定がやや低めの温度になっています。術者が汗をかき、それが術野に落ちると不潔になるからという面もあります。また、湿度が高いと雑菌が繁殖しやすいので、かなりドライな環境にしてあります。 以前の病院の地下の手術室で、そのときhead&neckは甲状腺の手術をしていました。上に述べたようなクリーンな環境で集中していると、ふと目の端に黒いものが揺れました。 「ん?」と思ったものの、思考はすぐに術野のことにもどります。数十秒後、また同じように視界の隅に黒く揺れているものに気付きました。 「あれ?蚊かな?いやいや手術に集中せねば・・・・ええっ!!!?」 蚊なんぞは、雑菌の塊です。おまけに患者さんは創を開いて蚊の大好物の血のにおいがぷんぷんしている筈です。はっと我に返り、周りに確かめました。 「いまなんか飛んで無かった??」 「あ、わたしも見た気がする!」 「ボクも見ました!」 どうやら、皆head&neckと同じ精神心理状態だったようです。まさか手術室に虫がいるわけないと思っているので、気のせいだと感じたといったところでしょうか。 さて、それからえらい騒ぎになりました。とりあえず術野に蚊が寄ってこないように滅菌布で覆います。目指すターゲットは1匹、どこにいるやら分かりません。そうこうしているうちに手の空いている看護師や麻酔科の先生達が集まってきてすごい人口密度になってまいります。術者、助手、看護師は皆消毒した術衣を着ているので術野以外は触れずただ傍観しているだけ、なんだかつまらない。一瞬見つけてもまたすぐに消え去ってしまう蚊はまるで皆をからかうようにあっちへ現れ、こっちで顔をだします。ぱちん、ぱちんとむなしく空をたたく音がこだましています。 10分ほど眺めていて、これは埒があかないと考えたhead&neckは提案しました。まず部屋の蛍光灯を切り、無影灯を消して真っ暗にした後、シャウカステン(レントゲンフィルムを見るガラス張りのライトです)だけを点灯し、その前でじっとみんなで蚊がやって来るのを待とうではないか! 総勢10名、待つこと15分、よろよろと蚊が飛んでまいりました。 すかさず素手で退治したのは手術室の婦長さんだったのでした。 ←22位まで上昇してびっくりです。ありがとうございます、でも一日一回のぽちを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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