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カテゴリ:診療
耳鼻咽喉科の病気で待ったなしという疾患は少ないのですが、咽頭、喉頭といった空気の通り道を扱うだけに、この場所の緊急疾患だけは急を要します。なかでも、窒息につながる喉頭近辺の浮腫や異物は患者さんも苦しみますがこちらも足が震えるほど切羽詰ったものです。今日はhead&neckがある地方病院にいたころの話です。
その時、head&neckは救急当直をしていました。250床くらいの小さい病院なので、全科当直といって、病院のなかに医師は一人。とりあえずの応急処置をするのが主な仕事でした。季節はお正月で世の中はみなコタツでのんびりTVでも見ている時期です。 昼過ぎ、救急室の電話がなりました。救急車からの連絡でした。 「ただいまから病院に向かいます。おもちをのどに詰まらせた78歳男性、現在のところバイタルは安定してますが喘鳴、咳著明、苦しげです。10分で到着予定」 のどに食物などの異物が詰まると、運が悪いとその場で窒息しますが、患者さんはたまたま隙間が少しある状態ではあるものの、やはりげつげつとのどにおもちが引っかかって取れないようです。完全に閉塞した状態では、病院に搬送するまもなくハイムリッヒ法というやりかたで異物除去を試みたりします。この方法は患者の背中側からみぞおちにこぶしを当てて、おもいきり引っ張り挙げることで肺の空気を外に押し出して、その勢いで異物を押し出すというものですが、異物がもちのようにねばねばしたものだとうまくいかないし、現在苦しげながらも呼吸ができているということなので、酸素を吸入しながら病院に搬送して、直接のどをみて異物を除去するのがもっとも正しい判断です。 救急車が病院に到着しました。患者さんはストレッチャーに横たわり、酸素吸入を受けています。のどからは痰がらみに似たようなごろごろという音が聞こえ、苦しそうにもがいています。 「すぐに中に運んで」 と指示を出しました。 ストレッチャーを救急車からおろすのに、[ガタン]と段差に乗り上げて揺れた瞬間、 「ひくっ」 と、異様な鳴き声のような呼吸と共に、患者さんがさらに苦しみ、一気にチアノーゼが来ました。 さて、どうなってしまうのか・・・・次回に続くのでした。 ←30位前後で奮闘中。一日一回のぽちを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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