やや更新が滞ってすみません。本日は当直中ですが、比較的落ち着いていて時間があります。とはいえ、当直というのは自分の専門外の患者さんをひたすら診なければならないのでかなりのストレスを感じます。医師になって10年以上経つ頃には、どの医師も概ね自分の専門とする分野は決まっており、逆に言えばいかに広い知識をつけたとしても10年以上前の知識なので、日進月歩のこの世界では専門外は古い医療をやっていることにもなります。その意味では現在の臨床研修制度はあまりにも時間的無駄が多すぎるといわざるをえません。
では、自分の専門分野はどうかというと、実はこれ、専門分野の中にも得意な疾患と苦手な疾患はあるのです。head&neckの専門は耳鼻咽喉科ですが、さらにその中でも頭頚部外科を専門としています。耳鼻咽喉科一般についての知識はもちろん身につけた後に腫瘍や手術を専門にやり始めたので、それしか扱えないということはありません。外来診療では耳、鼻の疾患や、めまい、味覚など、耳鼻咽喉科の分野の疾患に対する対応はほぼ漏れなく可能ですし、えり好みもしていません。
ただ、日々手術手術で過ごしていると、どうしても思考が外科的になってまいります。ということはどういうことかというと、めまいや耳鳴り、味覚障害などの内科的疾患の患者さんにたいする対応が苦手になってくるのです。このあたりの疾患の患者さんはお話を聞いてあげるだけで症状が軽くなったり、中には治ったりする方がいることは承知しているのですが、どうしても忍耐力が持たなくなったり次の患者さんのことが気になって話を途中で切ってしまい、あとで反省することもしばしばあります。逆に、head&neckの同期には、手術はあまり得意ではありませんが、外来でめまいや耳鳴り、難聴などの患者さんを診るのが好きな医師がいます。彼曰く、「だって話を聞くだけで治ることがあるし、原因を突き止めれば治らなくても感謝してくれるじゃないか。手術なんてうまく行けば良いけどうまくいかなかったり癌だったりしたら責められるだけで感謝なんかされないよ。」とのこと。
同じ耳鼻科のなかでもこれだけ考え方や得意分野が違います。「何でも診れる医師」なんて幻想に過ぎないと思うのでした。
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