さて、間が空きましたが、赤字と黒字の話です。
前回述べた病院の収入は複雑な診療報酬点数で国が定めて、2年に一度ずついじくりまわされます。その都度、病院や診療所は請求を変更しなければならないので、これだけでも相当な手間ですが、外来診療、特に病院の外来報酬は低く抑えられています。同じ病気で病院にかかるより、開業医にかかったほうが高いのですから、病気という不安を持つ患者が、検査機器のそろった病院を受診したがるのは当然です。病院のほうでは、医師の応召義務がありますから、来た患者さんは断れません。厳密に言うと「完全予約制外来」は医師法違反なのです。あちらこちらで言われる、「軽症患者が大病院に受診して混雑する」という現象は全く改善されません。受診にバリアをつけるため、特定初診料といって、紹介状の無い人からは2000円から5000円位の負担をしてもらうような制度が数年前に出来ましたが、焼け石に水です。かくして、軽症の患者の診療に時間をとられて重症患者を充分に診察できず、見逃しやミスに繋がります。
はっきり言うと、最も効果ある方法は紹介患者もしくは救急疾患以外は病院に受診してはならないという法律を作ることです。荒療治ですが、現在の医療崩壊を食い止めるには必要だと考えています。
次に、入院患者の診療ですが、これは技術料が圧倒的に低く抑えられているのは周知の事実です。たびたびこのブログでも述べているように、医師が10年以上かかってやっと身に付ける技術は全く評価されません。しかも全く根拠の無い改定に右往左往させられ、複雑怪奇な診療点数表が出来上がっています。個人的には、全面的な見直しと、先進国の平均並みの点数への引き上げが必要と思っています。更にドクターフィーが全く無いことも問題で、このあたりの意見を集約することは難しいのであれば、上限と下限を決めて医師自身に値段を決めさせる仕組みがいると思います。いわゆる悪徳医師や儲け主義を排除する罰則さえ設ければ不可能なことではないはずです。そこのところの手綱を引き締める役目こそが国や厚生労働省の役割ではないでしょうか。
いずれにせよ、老朽化してゆがみ極まる現行の制度は、小手先の改定ではもうどうにもならないところまで来ています。皆がそう感じていながら代えることの出来ない状況がこの10年続いていますが、崩壊する前に変わるのか。暗雲を見つつ今日も医療を行うのでした。
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