head&neckの病院では敷地内禁煙を実施しています。他の病院でも敷地内禁煙は院内規則として施行されており、世の中の流れのひとつではあります。喫煙撲滅派の努力によって、日本での若い医師の喫煙率は徐々に下がりつつあるようで、学会によっては喫煙を禁じているところもあります。ここ数年で、レストラン等も禁煙、分煙が進み、法律の後押しもあって公共の施設や、私立の場所でも不特定多数の人間が集まる場所は原則禁煙というのが常識となってきました。これ自体は悪いことではありません。喫煙者にとっては形見が狭いのでしょうが、煙草を吸わない人からしてみれば不快に感じる方も多いでしょうから、正義は禁煙派にあります。病気という面から考えても、喫煙は体に悪いのは常識です。冷静に判断すると肺ガンの発生率にはデーター上やや疑問が残りますが、COPDなどの肺疾患や喉頭癌にかかる人のほとんどが喫煙者であることは明白です。ただ、副流煙による健康被害に関しては信用はできません。禁煙派が根拠にしている論文内容をたとえるならば、1人乗りのエレベーターの中で副流煙をめいっぱい吸い込んだ状況でのデーターで、人間燻製状態であり、これでは病気になるのが当たり前です。実際実地臨床をやっていても副流煙が原因と思われる癌患者は見たことがありませんから、結局は直に喫煙している人が一番被害を受けていることは間違いなさそうです。
一方、お酒の害も明白です。こちらは、煙草よりもはっきりと因果関係があります。飲酒機会の多い人ほど下咽頭、食道癌になりやすく、脂肪肝、肝硬変も惹起し、さらには依存症の問題も生じます。煙草には無い酩酊状態を作り出し、健康だけでなく泥酔での事故や障害を起こすことがあるので取り締まりの対象となっているほどで、考えようによってはこちらの方が社会的損害は大きいのではないかと思われます。しかし、世界的に煙草ほど厳しくいわれないのは、個人差が大きいこともありますが、その昔のアメリカの禁酒法時代の教訓等もあるのでしょうか。「どんなに禁止しても結局人は酒を飲む」のだそうで、節度ある飲酒を推奨する方向に向かってるのが世界の流れです。とはいえ、やはり道を外れる飲み方をする人は多くいようではあります。
個人的な考えとしては、どちらの規制もほどほどのところがよいと思っています。人は正義には惹かれ逆らいませんが、寄り添うことも少ないというのが実情です。喫煙も、飲酒も、それを楽しみとする人がいれば受け入れる寛容さが必要なのですが、昨今の世の中、他人を許すという行為が徐々に失われて来つつあると思うのでした。
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