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February 2, 2007
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カテゴリ:オペラ・音楽

ヴィラゾン/ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」全曲
 
 なんだか、とっても、とっても久しぶりの更新になってしまいました・・・。しょんぼりここのところ、プチ昇進試験のための研修なんぞを受けたりしていたので、身心共に随分と疲れてしまい、パソコンの前には座るのですが、その前でついついウトウトしてしまったり、書きたいことはいっぱいあるのに頭の中でまとまらなかったりで筆が(指が?)動かず、さぼり癖がついてしまいました・・。どなたか、一発“喝!”を入れてやってくださいまし・・。びっくり

 さて、いつも、ヴェルディ、ワーグナーづいている私が、ここのところずっと『愛の妙薬』にはまっております・・。と、いうのも、先日もお話しましたとおり友人の結婚披露宴でこのオペラからの二重唱を歌ったのと、この3月に抜粋して歌うことが決まったためです。練習の意味もこめて何度も聞いているうちに少々バカバカしいストーリーながら、その美しくも楽しい曲を聴いて、味わえば味わうほどに味がしみだしてくる、まさにスルメイカのような愉しみを味あわせていただいています。
 とにかく多作で知られるドニゼッティ。そのほとんどが悲劇ですが、数少ない喜劇はどれも傑作の部類。その中でも『愛の妙薬』は底抜けに明るく楽しい作品となっています。他の作品はドニゼッティの憧れでもあるパリを意識して書かれた作品なので、楽しい中にもフランス人好みのしゃれっ気を感じさせるような作品であるのと対照的に、この『妙薬』はいかにもイタリア的な明るさの曲風が全体を支配しています。ですから、イタリア的な“声の芸術”も思いきり堪能できる作品となっています。精神病院で死を迎えるという悲劇的な人生を送った作曲家の作品とか、2週間くらいでつくってしまった作品などとは思えないほどに明るく楽しく、加えて実によく構築されたオペラであり、万人に愛される作品といっても良いのではないでしょうか・・。
 実はドニゼッティ、ベッリーニ系のいわゆる“ベル・カントオペラ”と言われる作品群にはあまり食指の動かない私ですが、何故か『妙薬』だけは聞いていて家にも幾つかCDがあったりしていました。また、以前このオペラのベルコーレという女たらしの軍曹を歌ったことがあるので、それなりに思い入れのある曲でもあります。ただ、ベルコーレを歌った当時は自分の中で歌や役柄への整理が付かず、未消化なまま終わってしまった感が否めませんでした号泣。カッコいい役として演じたらよいのかコミカルにしたら良いのか、イマイチはっきりと考えがまとまらずがっかりでした。また、本番を収録したビデオを見たら、今も適度以上に肥えていますが、当時は更にそれ以上肥えていたので、まるで軍服を着たガチャピン!!状態でかなり落胆してしまいました。(今でもあまり見ていて楽しいものではありません・・)

 それにひきかえ、CDやDVDに残されたプロの演奏のなんと楽しいこと!比較的人気のある作品なのでDVDだけでも4、5種類の映像がリリースされています。その中ではおそらく現時点で一番新しいDVDを先日購入。それが上記画像のウィーン国立歌劇場のライブ映像。出演は今ウィーンで最も人気の高いロランド・ヴィリャゾン(T)アンナ・ネトレプコ(S)のコンビによるものです。ヴィリャゾンは以前も書いたと思いますが、顔があのMr.ビーンことローアン・アトキンソンにそっくり。正直、あの声が無かったら、そんなにカッコいい男には思えない、のですが、歌声は中低音が安定したヒロイックな声でありながら非常に声の伸びもよく、久々に聞いていて心地よい歌手であります。

     びりゃぞんあときんそん as Bean

 声はどちらかというとヴェルディやらプッチーニを歌うのに適しており、ネモリーノ役には少々響きが太めな気もしますが、ビーン並みによく動く顔の表情と細かい芝居が愛らしく、ちょっと間の抜けた純朴な青年像はとてもぴったり。彼が、妙薬とだまされてワインを飲んで気分が良くなり、そばにあったリンゴ3個をジャグリングしながら歌う場面では会場から大拍手。おまけに有名なアリア“人知れぬ涙”は満場の大拍手に応えてアンコールしてしまうのです!一方のアディーナを演じるネトレプコも声に安定感があり心地よく聞くことが出来ます。やはり声的には少し音色が暗めなような気もするのですが、耳がキンキン痛くなるような状況に陥りやすいアディーナという役にしっかり安定した声と適度に艶っぽさを加えた歌唱表現と美貌に演技にとこちらも目耳共に満足させてくれる歌手です。両者とも昔の歌手のようにスコンッ!と抜けるような明るい発声ではなく、そういう意味では聞き劣りしなくは無いですが、その声の伸びといい、美声といい、演技も上手く、“オペラは総合芸術”であるという事を実に実感させてくれるのではないでしょうか。この2人の歌や芝居を見るだけでもこのDVDはそれなりに価値のあるものですが、これにまた、非常に渋くカッコいいイメージで作られた薬売り(実はただの詐欺師)ドゥルカマーラにイルデブランド・ダルカンジェロ。比較的、いかにも詐欺師的な怪しい伯父さんとして演じられることの多いこの役ですが、最近では少し男性フェロモンを発しているようなイメージの役者を起用して、現代風の詐欺師像を表出しているものが多そうです。ダルカンジェロの声は深いバスながら、その声は明るく丸みがあり聞きやすい声。歌にも芝居にももう少しコミカルな味がでるといいのに、と思うのは無いものねだりでしょうか・・。そしてベルコーレには、大ベテランのレオ・ヌッチ!いまやリゴレットやヤーゴといたヴェルディバリトンの第一人者に上り詰めた男が歌うところも少ない、比較的軽い役をひょうひょうと楽しげに演じ歌っている姿、なんとも感動的ですらあります。声は相変わらず個性的ですが朗々と存在感を示して歌っており場を引き締めています。本当のオペラ歌手(多分ヌッチ世代以後は“ホンモノ”の定義が変わって来ていると思いますが・・。例えば、歌も演技もそこそこに、平均的に良い歌手がホンモノと思われる時代)の存在感を遺憾なく発揮していました。
 演出は大御所オットー・シェンク。写実的で美しい舞台であり、奇を衒ったところがなく、最近には珍しい、実にオーソドックスで安心してみる事ができます。刺激を求める向きには少々退屈かもしれませんが、その分、役者達が自由闊達に舞台上を動き回るので、全く違和感なく、逆に躍動感すら感じさせてくれます。指揮はA・エシュヴェ(?)とかいう人。特にいう事はありません。可もなく、不可もない程度です。

 まぁ、このオペラの楽しさを知るには絶好のソフトが発売された事は一ファンにとって幸せ。是非、皆さんも一度ご覧になってください。





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Last updated  February 3, 2007 01:20:37 AM
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