マリちゃん物語 第二部35
㉟ マリエは家の中でマスクとの会話を思い出していました。「あのね、今何年何月何日か、あなたわかる」「2110年3月10日でしょ」「マスク日本て国知ってる」「日本、国、知らない。PAIで調べてみようか」「調べなくていいの、あなたが知っていれば嬉しいなと思ったの、わたしはそこから来たの」「遠いところ」「たぶんね」「わたしの家族も遠いところから来たんだよ」「どこなの」「ヨーロッパの地域」「ここはアメリカなの」「そうだよ」 やっぱり、いまは2110年で、ここはアメリカなのだ。人間の口からそういわれると信じられそうな気がする。そうだとしたらママはもうこの世にいないのだろうか。自分が歳をとっていないのなら、ママも歳を取っていないのかもしれない。 そんなことを考えているマリエを、ミマナはじっと観察している。 きょうのマリエはいつもと表情が違う、明るく見える。なにかいいことが学校であったのだろうか。マリエに聞いてみよう。「ねえ、マリエ、学校でいいことあったの」 マリエは声を掛けられてそっちを向きました。 ミマナがじっとこっちを見ていいる。最近いつもそうだ。なにか監視されているみたいでいやな気分だ。でもそんなことは表情に出さない方がいい。「なにもないよ」「でも、いつもより顔の表情が明るいよ」 やっぱり細かいとこを見ているんだ。「クラスに少し慣れただけだよ」「それはよかった。ここでの言葉ができるようになればもっとクラスに溶け込めるわよ、マリエ、あなたは言葉だけでも、そうとうなハンディになっているから」 言葉だけじゃなく、100年分の差があるということである。 お世辞を言ってみたらロボットてどういう反応をするのだろ。マリエはふとそんなことを考えた。「そうだね。ミマナ、化粧がうまくなったね。最近のミマナはきれいだよ」「そうありがとう。わたしは女性のロボットだからきれいていう言葉は点数が高いの」「うれしいんだ」「そうよ」 そうか、ロボットて点数で判断するんだ。 会議で遅くなったジエームス先生は教室に急いだ。マリエの顔を正面からみれる、そう考えるとなんだかワクワクする。 教室に入ると、デービスのグループは彼ひとりだけであとの二人はいない。「会議で少し遅れてしまったがデービス、君ひとりか、あとのふたりはどうした」「せんせいを迎えに行くって、出たきり戻りません」 デービスは、自分がマリエに帰れと言ったことを言わないでそういった。「いや、来なかったな」「じゃ、エスケープしたんだ。あの二人ぜんぜんやる気なかったもの」「そうか、残念だな」 ジエームス先生はマリエと会えないことをの本音をつい口にしてしまった。 デービスはそうは受け取らなかった。「残念だなんて、僕はもうe-スポーツ大会に参加できないの」 デービスはジエームス先生に食って掛かるようにいった。「帰ってしまったのなら仕方ない、明日考えよう」「明日考えるって、僕はどうなるの」「だから明日考えるといっただろ」 ジエームス先生の剣幕にデービスは黙ってしまうよりありません。 (つづく)