界雷
主なあらすじ・・・ 前回からの続き・・・ 古(いにしえ)の民(たみ)にとって 時折 天から降り注ぐ無数のいかずちは 単なる自然現象に在らず 愚かで罪深い自らへの 神による裁きとして畏怖していた・・・ どれだけの知己(ちき)を用いようとも それを嘲笑うかの如く 訪れる災厄はその絶大なる力を持って全てを蹂躙するばかりか 人々の探究心を消失させ あまつさえ 高度な文明を誇った西国さえ その恐怖にされるがままであった・・・ 「界雷」 それは西国の言語で 「稲妻を統べる者」と意味する その名を冠し 「神の怒りの具現化した姿」とされ 崇拝の対象にまでなりえた飛竜が存在する 界雷と呼称される飛竜を綴った(つづった) 僅かに残る伝書の中でも 生物として語られる書物は 皆無に等しく神話の粋を出ないものが多数を占める いつの時代より存在してるか分からない古ぼけた書物を紐解いてみると こう記されていた・・・ 人が訪れる事さえ出来ぬ 切り立った峡谷にのみ生息しその姿は 大型の猛禽類を思わせ 絶える事無く いかずちを身に纏う2対の強靭な翼は とてつもない機動力を与え 大空に舞う姿は神々しくさえあった 後の世に言う ベルキュロスである クライスは 黒褐色のアミュレットをクルクルと弄びながら耳まで裂けた唇を釣り上げ 自らを射抜くように見据えるふたつの瞳に向け言い放った 「貴様の弟とやらも 愚鈍じゃのぉ・・・・ ベルキュロスのいかずちを帯びた触手に気づかずとは ひひひ・・・」 下卑た嗤いに 同調するかのように 頭部を覆った深緑色のローブがまくれ生涯 日の当たらぬ洞窟に住む生物を彷彿させるような病的にまで青白い肌が時折のぞく 「ひひ・・・ ひひ・・・ さぁどうするのじゃ小娘! 貴様の愚鈍な弟が 今にも息絶えようとしておるぞ!! ひひひ!!」 「ひひ・・・ ひひひ」 「ひぃっ!!!!!!!」 永久(とこしえ)に続くと思われた クライスの狂気じみた嗤いが引き攣る! 余裕の表情は霧散し 落ち窪んだ細い瞳に恐怖の色を浮かべる 鳥肌が沸々とわき立ち 自らの背は凍りついてしまったかのようである カチカチと小刻みに歯が鳴っている ぞくり・・・・ ぞくり・・・ 「あんた 震えてるのかい・・・?」 死者さえ凍りつかせるような 魅那の厳烈なる笑みが クライスにとって生涯感じたことの無い 恐怖という名の感情を芽生えさせていた・・・ 続く・・・・