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カテゴリ:アメリカで学んだこと、知ったこと
この時期になると良く耳にするのが、『Happy Holidays(ハッピーホリデーズ)』と言うべきか、それとも『Merry Christmas(メリークリスマス)』と言うべきかなどという議論である。
私がアメリカに来たばかりの頃は、お店などには『Merry Christmas』と書かれたデコレーションが沢山飾られていたものだが、特に最近は『Merry Christmas』の文字も余り見かけられなくなったし、また、店の店員からは『Merry Christmas』ではなくて『Happy Holidays』と声をかけられる方が多くなったようにも思える。 そういえば、以前私が販売職についていた時にも、『こちらからお客様に声をかける場合は『Merry Christmas』ではなく、なるべくは『Happy Holidays』と言うようにして下さい。但し、お客様から『Merry Christmas』と声を掛けられた場合は、『Merry Christmas』と言っても差し支えはありません。』などと店の本部から指示を受けたことがあった。 その理由はというと、『Merry Christmas』という言葉を使うことによって、キリスト教信者ではない人の気分を害してしまう恐れもあるからなのだとか、、、。 しかも、political correctness(ポリティカル コレクトネス: 言葉の表現や用語に人種・民族・宗教・性差別などの偏見が含まれていないこと*)の概念においては、『Merry Christmas』という言葉を使うことによって、特定の宗教またはその宗教にまつわる行事・習慣を押しつけることとみなされる恐れもあり、また、そうすることによって人の精神(宗教)の自由を危ぶむものと捉えられかねないということになるらしいのである。 確かにクリスマスはそもそもキリスト教のお祝いということを考えると、あらゆる人種、そして、あらゆる文化背景や宗教を持つ人たちが住むアメリカでは尚更、どう挨拶をするべきかなどという配慮が必要になってきてもおかしくないとは思うのだが、そういった意味でも、宗教を意識させない『Happy Holidays(良い祝祭日を!)』の方が無難な挨拶とされることも多いようだ。 また、『Happy Holidays』は実に便利な言葉で、12月の様々な行事全てをひっくるめて表現することも可能である。 例えば、12月24日~25日にあるクリスマスイヴとクリスマス、12月26日から1月1日にかけて祝われるKwanzaa(クワンザ:アフリカ系アメリカ人や汎アフリカ主義者の祝祭日。特に、宗教とは関係がなく、アフリカ系アメリカ人としてのルーツや誇り、そしてその伝統や文化などを祝う行事。)、そして、Hanukaah(ハヌカー:ユダヤ教の燈明祭。Chanukah ともHanukahとも言い、ユダヤ暦に基づいているため西暦では毎年日付けが変わる。ちなみに、今年は12月4日から12月12日まで。)、Eid(イード:Eid ul-Adha(イード・アル=アドハー)。イスラム教の祝日。ヒジュラ暦と呼ばれる太陰暦に基づいているため、毎年日付が異なる。ちなみに、今年は12月19日の暮れ。)などなど、、、。 どれもHolidayには違いないので、相手がどの神様を信仰しているのか、また、相手がクリスマスを祝う立場なのかなどと困った場合には、やはり『Happy Holidays』の使用が無難なようである。 しかしその一方では、political correctness(ポリティカル コレクトネス)を余りに気にしすぎる風潮の影響で、『Merry Christmas』が堂々と使えなくなることを危惧し、「これはクリスマスに対する差別」と反発する人もいるのも事実、、、。 これといった宗教はもっていない私の場合は、とりあえず初対面で全く知らない人の場合は『Happy Holidays』と言うように心がけ、相手が『Merry Christmas』と言ってきた場合にはそのように合わせ、また、知っている相手の場合は、会話の中からヒントを見つけ、なるべく出来る範囲で台詞を選ぶようにしている。 そういえば昔、同僚が「Merry Christmas(メリークリスマス), Happy Holidays(ハッピホリデーズ), Happy Kwanzaa(ハッピークワンザ), Happy Hanukkah(ハッピーハヌカー), and Feliz Navidad(フェリスナビダー)!」と帰り際に冗談交じりの挨拶をしたことがあり、会社の人達の苦笑を誘っていたことがあったのだが、いやはや、たかが挨拶とあなどれないものだなと改めて思うのである。 後記: political correctness(ポリティカル コレクトネス)に関しては、いつかまたの機会に取り上げたいと思いますが、アメリカでのクリスマスはやはり日本に導入された行事としてのクリスマスよりも遥かに宗教色が強いことが伺えます。 私個人としては、「メリークリスマス」、「ハッピーホリデーズ」のどちらでも構わないのですが、中には、台詞によっては気分を害する人もいるということは覚えておきたいことだと思います。 それから、「メリークリスマス」、「ハッピーホリデーズ」に関しては、台詞だけでなく、カードのメッセージや切手でも注意を払いたいものです。 ・カード・・・日本では年賀状を送るように、アメリカではクリスマスの時期にグリーティングカードを送る習慣がありますが、同じホリデーシーズン用のカードでも、「Merry Christmas」と印刷されているカードと、「Happy Holidays」や「Season’s Greetings」などと印刷されているカードも販売されており、好み・用途に合わせて選択出来るようになっています。 ・切手・・・毎年、ホリデーシーズン用の切手が発行されますが、種類も豊富で、イエスキリストを抱く聖母マリアのイメージが描かれた切手、冬やクリスマスをモチーフにした切手、そして、Hanukaah(ハヌカー)、Kwanzaa(クワンザ)、Eid(イード)の切手などが発行されています。 *フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用。 *汎アフリカ主義・・・アフリカ人の主体性を回復することを目的とした思想、および一連の運動。(現代政治用語辞典http://pol.cside4.jp/kokusai/61.htmlより) *Feliz Navidad(フェリスナビダー)・・・スペイン語で、『メリークリスマス』。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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