【オーディオからAIまで】今日から使えるフーリエ変換 普及版
今日から使えるフーリエ変換 普及版 実はフーリエ変換はある関数とcos(あるいはsin)関数との相関の程度を示す相関関数そのものなのである。(207ページ)著者・編者三谷政昭=著出版情報講談社出版年月2019年4月発行本書は、2004 年 12 月に発刊された『今日から使えるフーリエ変換』の普及版である。ディジタル信号処理工学と教育工学がご専門の三谷政昭の著作で、冒頭で、「AI がどんなに進化しようとも、フーリエ変換の重要性は 14 年前からまったく下がっていない」「ますます増大している」(4 ページ)と述べているとおり、ディープラーニングの流行で、フーリエ変換のニーズが増えていることは実感する。技術者ならご存じの通り、フーリエ変換とは「あるひとつの複雑な波を、わかりやすいいくつかの単純な波に分解すること」(6 ページ)だ。もう少し数学的に言えば、ある信号 x(t)を cos 波と sin 波の重ね合わせとして考えるものである。変換式自体は単純で美しく、その応用範囲はとても広い――。本書では、まず、ブレンドしたワインを例に、フーリエ変換の概念を説明する。続いて、フーリエ変換および逆変換の積分関数を、整数に置き換えて、四則演算だけで説明する。これは目から鱗であった。デジタル信号も扱えるのだから、整数だけで式の説明ができてしまう。フーリエ変換は、複数の信号値を 1 個の周波数スペクトルのデータに置き換えるわけだから、データの圧縮にも使える。実際、静止画の JPEG、動画の MPEG、音声の MP3 といった圧縮方式は、フーリエ変換を利用している。ここから、複素平面(ガウス平面)を使ったフーリエ変換の解説に入っていくわけだが、まずは、フーリエ変換の積分値が四則演算だけで求められることを紹介する。このことから、簡単な電子回路を使って積分計算の肩代わりをさせるデジタル・フーリエ変換が実装できることが分かる。実際、多くの IoT 機器にデジタル・フーリエ変換回路が実装されている。グラフィック・イコライザやスマホのノイズフィルターもフーリエ変換の応用だ。また、フーリエ変換が、ある関数と cos(あるいは sin)関数との相関の程度を示す相関関数だということを紹介している。統計・検定の世界でもフーリエ変換が活躍する。そのほか、機械的振動や電気信号などの物理系信号の解析、ロボット制御、経済予測なども、フーリエ変換を使うことで問題解決への糸口が見つかる可能性がある。非線形とは、アナログ信号を扱う中で音などの信号波形がもとの信号波形と等しくない状態をいい、オーディオでは波形の形状がくずれて再現されるため、音質が変わってしまうなどの劣化要因となる。インパルス応答出力を知ることで、システム解析が可能となる。これは私たちが日常よく用いているシステム解析法でもある。たとえば、茶碗の縁をコツンと叩くと聞こえる音(いわば、茶碗のインパルス応答)から、それが割れていないかどうかを調べたり、医者が聴診器で音を聞きながら患者の胸をトントンと叩いて診察するのも、胸部のインパルス応答を見ているわけである。線形システムの周波数特性すなわちシステム関数を調べたいときは大きく 3 つの方法が考えられる。(1)インパルス応答を測定しそれをフーリエ変換する方法(2)正弦波を入力信号とする方法(3)白色雑音を用いる方法