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カテゴリ:しんみり
月に見守られて、大通りの○○薬局にひた走った木曜の夜。
人の気配が消えたところで、 鍋の中の得体の知れないものを、市指定のゴミ袋に入れ、 適当に、しかし、パンダ母の足の快復を真剣に祈りながら、 包丁を投げた。 幸い、一度目で、刃が向こうを向いて落っこちてくれたので、 ほっとして、ダッシュで家に帰った。 そして、 翌日。 つまり金曜日の朝、恐る恐る、パンダ母に 「あの・・・お義母さん・・・ わたし、今日パン教室行かないほうがいいでしょうか?」 と聞いてみた。 パンダ母は、ちょっと渋い顔をしたけれど、 「行かなくちゃいけないでしょ?行っといでよ。」 と言ってくれたので、お言葉に甘えて、パン教室に行った。 パンをこね、お菓子を焼き、昼を回ったので、焼けたパンを食べていたら、携帯 「あぁ・・・オンマだけど・・・入院したから。。。」 えええええっ?!!! そ、そんな。。。 昨日の、わたしのやり方がまずかったの? ゴミ袋じゃなくて、やっぱり撒かなくちゃいけなかったの? 祈り方が足りなかったの? それとも、うっかり呪ってしまったの? 大急ぎで家に帰り、歩いて数分の成形外科の病院に行くと、 6人部屋のにぎやかな病室に、パンダ母がしょぼんと寝ている。 「お義母さん~~~」 と部屋に入ると、パンダ母は、次から次からおつかいを頼み始めた。 パンダ父のお世話。 これは何とかなる。 変てこ売り場に通ってるおばさんに、 その日の目玉商品をもらってきてもらいたい。 これも、何とかしよう。 問題は、パンダ母が毎日集金に出かけている、契(ケ)だ。 契については、いまだによくわからないけど、ここに載ってる通り。 「今日のとこは、とりあえず、 ○○と□□と▲▲と@@に集金に行ってきて。 ○○のおかみさんには、あたしからちゃんと話してあるから。」 夕方とぼとぼと重い足取りで、商店街をゆく奥さん まず、ブティック○○に行くと、気の好さそうなアジュンマが出てきて、 契のお金を出し、 「ここにハンコ押してね。」 わたしがその手帳にハンコを押し、店を出ようとすると、 「お向かいが□□だからね。」 と、次の集金先を指差した。ありがとうさんです・・・ 向かいもおばさんブティックだった。そこの店主も愛想のいいアジュンマで、 わたしがパンダ母の代理で集金しているのだと知ると、 「あらら~、お嫁さんが大変だねえ~。。。」 と、同情してくれた。 お商売してる人というのは、みんな朗らかでいい人そうだな~と思いながら、 3軒目の▲▲の店の扉を押した。 ▲▲も衣料雑貨のお店だけど、3軒の中では一番おばさんっぽいお店かな? 「いらっしゃいませ~~~~♪」 と、お店のアジュンマがにこやかに迎えてくれた、と思ったら、 「あの~・・・義母の代理で集金に来ました。。」 わたしが口を開くや、アジュンマから笑みが消え去った。 「明日にしてくれない?今、○○さんがいないから。」 知らんがな、○○さんがどうとかこうとか・・・ 一瞬、パンダ母の顔が脳裏に浮かんだが、仕方がない、 「はい。じゃ、さようなら~。」 と、とっとと帰ってきてしまった。 あ、いけない。もう1軒あるんだったよ。 ▲▲の角を曲がって、@@食堂へ。 ぎぃ~~~~ 「いらっしゃいませ~♪」 すいません、客じゃなくて。 「あの~・・・義母の代わりに契の集金に来ました~。」 厨房からカウンターに身を乗り出したおばさんが、 「ええっ?何だって~??!」 もう一度道々何度も暗唱した台詞に間違いはない・・・はず・・・ 「お母さんの代わりに契の集金に来ま・・・」 大和なでしこのわたしが、細い声でもう一度繰り返したものの、 全てを言い終わらないうちに、おかみさんが 「あ~~~っ、うちはそういうのいいから!よそでやっておくれっ!!」 へっ?! よそでやっておくれ、って、よそってどこ? え?店間違った?? すごすごと店を出ようと、ドアを押す前に、ふと、振り返り 「なんだい?まだ、なんか?」 「あの~・・・契のお金なんですけど~。。。」 ともう一度だけつぶやいてみた。 すると、おかみさん、目をまん丸くして、 「あっら~~~!!!ごめん、ごめん!!! あら、やだ、集金?お義母さんどうしたの? ごめんね~。てっきり、変な外人が来たのかと思って~~!!」 変な外人が来ることあるの、この店?? アナタノタメニ、オ祈リサセテクダサ~イとか? 国ニ帰ルオ金ガ足リマセン、困ッテマスヨ、ワタシ~・・・とか? 「あ~あ~!そういえば、お義母さんのお祝いの席で会ったわよね~!」 あ・・・ああ、あの、あの、忘れてくれたほうが幸せってな1日のことね・・・ 「あ、ああ、はぁ。あはははは~。」 笑ってごまかしていると、ようやく、おかみさんが、滞っていたお金を出してきてくれた。 「お義母さん、相当悪いの?」 「あ、ええ、今日から入院しちゃって・・・」 「え~?そりゃ大変だね~。 あはは、いやだ、あたしったら、変な外人かと思って、ごめんね~。」 と、またおかみさんの話が巻き戻ってしまい、長くなりそうだったので、 「あ~、いえ、じゃ、さようなら~」 と、そそくさと店を後にした。 こんなのが毎日続くのか~と思うと、気分が沈んできた。 わたしは、環境の変化というのにめっぽう弱いのだよ。 市場を通りかかったら、春の花たちがいっぱい並んでる。 小さなバラの鉢を買った。 初仕事のごほうび。 早速屋上に植え替えたよ。 今年は、パンダ母がそんな感じで具合良くないから、 いつもの年なら、屋上いっぱいに植えるトンガラシが、まだ1本もない。 いつもは、場所を奪い合うように、トンガラシに混ざって、 わたしがハーブや花の苗を植えてるんだけど。 やっぱり、家族揃って健康が一番だよね。 参りました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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