木の上に茂る「知恵者」
この季節、落葉広葉樹の木に、ひときわ目立つ茂みを見つけることがあります。「ヤドリギ(寄生木)」です。一緒の枝から生えていますが、寄生される木(寄主)とは別の種なので、寄主が葉を落としても、ヤドリギだけは、独自の枝で茂っています。寄主の枝に、くさび形の根を張り、水分と養分をもらいます。また、木の高いところに茂っているので、太陽からの光も存分に浴びることができます。この植物、どのようにして高い木の枝に、根を下ろして寄生できるのか、不思議に思われるでしょ?種がタンポポのように風に飛んでいくわけでもなく、ましてや地面に実が落ちてしまうと、高い枝には登れないし・・・ここで、繁殖のために、助けを請う相手がいます。「鳥」です。ヤドリギは鳥たちに、自分の種をおいしい果肉で包んだ実を用意します。鳥たちは、われ先にと熟した実をついばみます。普通、鳥はのべつまくなしに、どこへでもフンをしますが、ヤドリギもここはちゃーんと考えていますね。種を包んだ果肉は、粘り気が強く、鳥がフンをしても簡単には落ちません。困った鳥は、粘り気のある自分のフンを、木の枝になすりつけて取ろうとします。そのなすりつけられた木の枝に、ヤドリギの種がしっかりとまとわりつき、徐々にくさび型の根を張るのです。繁殖方法から、生きていくまでの知恵は、半端ではありませんね。何から何まで、他者のお世話になる存在ですが、寄主以上に大きくなったり、たくさんの株をつけようとはしません。寄生植物といえど、寄主に対する寄生の「ほどほどな加減」というものを、わきまえているのかもしれませんね。たくましく生きる「木の上の知恵者」は、雑木林や公園、街路樹が生えている場所に、今なら簡単に見つけられるでしょう。