|
テーマ:お勧めの本(7363)
カテゴリ:本(小説)の話
前回の日記(バトンの答え)で、『好きな本』としてとりあげたのが、
山田詠美の長編小説『トラッシュ』です。 良いと思う本はたくさんあるのですが、「好き」という点からこの本を選びました。 山田詠美は、私が10代後半から20代前半にかけて、もっとも好きな作家でした。 読み始めたきっかけは、彼女が私にとってとても身近な福生に住んでいたので・・・。 特に初期の作品は、当時、福生の夜遊びにどっぷりとはまっていた私にとって共感ポイントの多いものが多く、最初はうんうん、そうそう、という感じで読み始めました。 読み始めたら、すっかりはまってしまって、初期の作品は全て持っていて、どれも当時何度も何度も読みました。 なので、その時期と彼女の小説は切り離せなしては思い出せないくらい、密接に結びついています。 私にとって山田詠美の小説は、ストーリーを楽しむ本ではなく、大げさにいえば、自分の中の意識の基準を確認するための本でした。 山田詠美の小説では常に夜遊びや恋愛ばかりが描かれているわけではなくて、私は初期の子供もの、学生ものがとても好きです。 例えば『晩年の子供』や『風葬の教室』、『蝶々の纏足』など・・・。 多くの作品に共通しているテーマは、自分の中に基準を持つこと。 周囲に馴染んでいなくったって、良いものは良いということ。 そんなAmy姐さんの価値観がフルパワー全開なのが『ひざまずいて足をお舐め』。 タイトルもすごいけど、中身もすごい! 若かりし日、何回読んだかわからないくらい読みました。 『ジェシーの背骨』は、子連れの黒人男性との恋を始めた日本人女性と彼の息子との間の葛藤を描いた作品です。 (山田詠美の小説の多くは、彼女が実際に体験したこと、または密接に知っていることが書かれています。) 「幼い頃から、両親の憎しみを浴びて成長した子供。彼はそれに何の反論をする権利も持たずに育って来た。彼の体に層を重ねて来た憎しみは彼自身のものではないのだ。それらを一枚一枚剥いで行くのにはどうしたらよいのだろう。」(本文中より) 本来、何の関係もない大人の女性と他人の子供。 二人が葛藤しながら手探りで愛の形を探していく本作で、山田詠美は平林たい子文学賞を受賞しました。 『トラッシュ』はこの『ジェシーの背骨』の続編として書かれた長編ですが、ボリューム的には何倍もあります。 『ジェシー』が主人公ココと少年ジェシーの間だけの小さな世界の話だったのに較べると、『トラッシュ』はもっと世界も人間関係も広がっています。 『トラッシュ』で描かれているのは、 「人を愛すること」 「愛する人のことを思いやること」 「自分を大切にすること」 「幸せになること」 ここでいう『愛』とは男女愛に限らず、広い意味での愛です。 登場人物はみんな、大人ぶってはいても不器用で、それぞれ傷ついたり傷つけたりしながら、自分を幸せにしてあげようと真摯に生きている。 人間なんて、みんなもろくて弱くて、それでも幸せになろうと、一生懸命もがいている。 恋につまづいた時、人間関係に疲れてしまった時、読み返すと前向きな感情が湧いてくる1冊です。 『トラッシュ』は山田詠美作品の中のひとつの頂点といえる作品だと思います。 単行本も文庫も、装丁がまたいいんですよねえ。 ちなみに私は、ここ数年の山田詠美作品は好きではないです。 なんでかな。 あんなに好きだった作家なのに。 私にとっての山田詠美作品の魅力のひとつが実体験からくる説得力だったのに、彼女の結婚以降、「創作した話」にウェイトがシフトしたからかもしれません。 一応、出るたびに読んではいますが、昔の作品に対するような共感が湧いてこなくて・・・。 最新作の『風味絶佳』は柳楽優弥くんと沢尻エリカで映画化ということですが、この本の帯に「『ベッドタイムアイズ』から20年」と書いてあって、時の流れを感じました・・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 18, 2006 04:07:48 PM
[本(小説)の話] カテゴリの最新記事
|