嘘が嘘を、犯罪が犯罪を・・・ 『シンプル・プラン』スコット・B.スミス
先日の松岡農水相の一連の騒動は、本当に見苦しく情けないものでしたね。「ナントカ還元水」から始まり、「水道水を飲む人少ない」発言まで墓穴を掘りまくり・・・。とはいえ、最初の嘘のほつれをとりつくろうために、嘘で嘘を塗り固める羽目に陥ってしまった経験は多くの人が持っているかと思います。ちょっと古いですが、スコット・B.スミスの小説『シンプル・プラン』は、小さな嘘が大きな嘘を、小さな犯罪が大きな犯罪を呼び、思いも寄らぬような事態にはまりこむ、その過程を見事に描いた作品です。(デビュー作でこのクオリティはすごい!)ごく平凡な主人公がどんどん深みにはまっていく様が、全く無理のない展開で描かれるため、「自分も同じ状況だったら、同じようにするかも・・・」というリアルな恐怖を感じます。サスペンス、ミステリーはわりと好きなジャンルでよく読みはするものの、マニアではないので、内容はすぐに忘れてしまうことが多いのですが、この作品は非常に印象深く、記憶に残る1冊になりました。アメリカの田舎町、降り積もる雪、些細な嘘がどんどん犯罪にエスカレートしていく様子は、コーエン兄弟の『ファーゴ』を彷彿とさせる作品ですが、なんの縁かコーエン兄弟の無名時代からの盟友ともいえるサム・ライミが映画化しています。(対抗心?)これがつまらない。原作で感じる「自分も同じことをしてしまうかも・・・」という恐怖があまり感じられず、小説のように主人公に共感できなかった・・・。脚本は原作者のスコット・B.スミスが担当しているので、彼には小説家としての才能はすばらしいものがあったものの、脚本家としては力不足だったのか、そもそもサム・ライミ向きの題材ではなかったのか・・・。(主人公の兄役のビリー・ボブ・ソーントンの演技は良かった!)原作には、そのまま映画になりそうな印象的なシーンが結構あって、うまく作れば面白い映画になりそうな話なんですけどね。残念。もしも映画だけをみて「つまらなかった!」と思った方がいたら、ぜひ原作を読んでみてください。それにしても、デビュー作でこれだけ面白い本を書いたスコット・B.スミス、その後の作品が日本で全く出ていないのはなんででしょう?スティーブン・キングの賛辞効果か、セールスも悪くなかったと思うのですが・・・。アマゾンの洋書で検索すると数冊ヒットするのですが、アメリカでもあんまり売れていないのかな・・・。もう1冊くらいは読んでみたい作家です。(英語で読めればいいんだけどね・・・・・・・沈)