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テーマ:お勧めの本(7363)
カテゴリ:本(小説)の話
台風が通過するときは、なぜ凄絶といえるほどの夕焼けになるのか、
月曜日も期待を裏切らない、ものすごい夕焼けでした。 私には台風と夕焼けの因果関係はわからないのですが、きっとちゃんと科学的な説明があるんだろうなあ。 (教えて、森田さん!) 数ある科学の中から気象学を選ぶ人というのは、きっと本当に空を見上げることの好きな人なんだろうと思うのですが、どうなんでしょうね。 気象学者といえば、新田次郎は気象庁に在庁中に作家となった経歴で知られています。 (妻は戦後の抑留・引き揚げ体験をつづったベストセラー、『流れる星は生きている』の作者、藤原てい。) 私の父は全く小説を読まない人なのですが、趣味が登山なので新田次郎の山岳小説だけは読んでいました。 山岳に限らず実在のテーマに題材をとることが多く、科学者らしい硬質な作風が特長で、私も好きな作家です。 数ある著作の中で、私が好きなのが実在の人物フランク安田の生涯を描いた「アラスカ物語」です。 明治元年に生まれた安田恭輔は15歳で両親を失なったことから三菱汽船に就職、19歳で外国航路の乗組員となり渡米。 その後、非常な苦労の末に沿岸警備船の一員としてアラスカを訪れ、やがてエスキモーとして暮らすことになります。 白人による鯨の乱獲や麻疹などの疫病によって滅亡に瀕したエスキモーの一族を引き連れて険しい山脈を越え、様々な苦難の末に安住の地を作るという数奇な人生をおくった彼は「ジャパニーズモーゼ」と謳われ、敬愛されたそうです。 新田次郎は取材紀行のなかで「この仕事ほど、書かねばならないという自意識に取り憑かれたものはなかった。フランク安田こと安田恭輔という人物に惚れこんでしまったからであろう。」と述べています。 一家離散、単身での渡米、人種差別と過酷な労働、エスキモーの部落の崩壊、そして第二次世界大戦の際は強制収容所にも収容されたその数奇な運命に圧倒される1冊です。 生涯日本に帰ることがなかった、というフランク安田の望郷の念にも心をうたれます。 関連URL(エスキモーという呼称について) ■放送大学スチュアート ヘンリ研究室 イヌイットかエスキモーか 民族呼称の問題 http://campus.u-air.ac.jp/~stew_hon/HTML/inuit_eskimo03.html こちらは昨日の空。もう秋ですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 20, 2006 05:58:28 AM
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