カテゴリ:日本の旅
「でね、一度住職さんに釈迦如来さまと薬師如来さま、阿弥陀如来さまのどれが一番偉いのですか?と尋ねてみたことがあるんです。さて、どれが一番偉いと思う?」 私はなんとなくピンときて、「お姿を変えてるだけで、どれも同じ」と答えてみた。 「お、正解!」 はじめは時間を気にしていた私も、西明寺の従業員であるというおじさんの話に段々のめり込んできて、時を忘れ聞き入っていた。 ペンライトを再び秘仏である薬師如来像が入っている箱に戻す。 そこには4つの紋が描かれていた。 「左端は徳川の葵の紋、右端もご存知、菊のご紋。」 「左から二番目は、江戸時代にこの寺を復興させた望月家の紋でして、望月家といえば甲賀忍者、、、」 「え?忍者?」 こんなところで忍者の話が出ようとは、恥ずかしながら忍者といえばハットリくんしか知らない私はびっくりしてしまった。 いや、ここは近江の国なのだから忍者が出ても不思議じゃないかもしれないが、心構えができていなかった。 「あの松尾芭蕉が伊賀の忍者だったのも有名な話だよね。」 「へ?松尾芭蕉が忍者???」 頭の中、どんぐり眼(まなこ)にへの字口の松尾芭蕉が回っている。 「そうだよ、松尾芭蕉は幕府のお庭番で、当時貧しくてお米もあまりとれなかった東北の人々が年貢を誤魔化していないか調べるために、表向きは俳人として奥州と北陸を巡った記録が「おくのほそ道」なんだよ。」 頭の中、くるくるほっぺにふくめん姿の松尾芭蕉がスパイをしながら歌を詠んでいる。 「え?これ有名な話だよ。」 驚く私におじさんは続ける。 「で、甲賀の望月家もそう。幕府より指示を受け、島原の乱で知られる隠れキリシタンを見つける諜報活動をしてたわけだ。」 「任務は果たせたけれど、それによって多くの百姓たちが命を落とした。その罪滅ぼしもあってこの寺に入り復興させたといわけ。」 「なので、ここに望月の紋がある。」 「もうひとつはさっきお話ししたように、生まれる前と現世、そして死後の世界がくるくる回るのを表現したもの。」 「色んなお話を伺いましたけど、私的には松尾芭蕉が忍者っていうのがすごく面白かったです。」 頭の中、まだ黒装束で手裏剣を持った松尾芭蕉が古池の前で腰かけている。 「芭蕉もいいけど、自分の干支の十二神将像にお願いするのを忘れずにね。いい、干支を間違えたら聞いてもらえないからね。」 それにしても、さすがは近江の国。
花見に彦根を訪れて、まさか忍者にまで話が及ぶとは、まして隠れキリシタンまで登場するとは思いもしなかっただけに非常に興味深かった。 国宝の古い建物ばかりじゃない歴史を感じながら、帰路車を走らせる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.04.11 15:20:16
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