今日の音楽・・・Turn Out The Stars (1980.6.8)
■Turn Out The Stars The Final Village Vanguard Recordings ,June 1980 / Bill Evans Trio(1980)ジャズはWhatではなくHowであり、もしWhatであるなら、それは静的なものであって、決して成長しないだろう。 -ビル・エヴァンス音楽が好きになると人生の幅や、喜び悲しみの幅が広がる。今まで見えなかったものも感じることが出来るようになることもある。(当然、ないこともあるww)副産物的な結果として、幅の広い心豊かな人生が送れるようになる。(これもないことあるよな)音楽ぐらい生涯付き合っていける力強い友達はありません。(目が悪くなったら本はつらいし)だからこそそれを奪われたくはない。自由は与えられるものではないから、勝ち取ろう。今日、たまたま"エヴァンス"でぐぐって、2chのスレを見てたら、『出品者ウハウハ、エヴァンスならなんでもいいんだろコイツら』と、自分も入札してたエヴァンスがらみのCDのオークションのことが皮肉られていた。あいたたた…返す言葉はございません。私は競り負けたのだが最終2万7千円までいってたな。CD1枚が。さて、その生涯最後となったビレッジヴァンガードでの最後の夜。この演奏がこの世に残されていたことに只々感謝。この6枚に選ばれなかった、残りの37曲の演奏は日の目を見ることはないのだろうか。各セットで同じ曲が多いから省いた、というのではなくクオリティ的な問題かもしれないが、それでも聴いてみたい。彼いわく、"一番よかった"土曜日を終えた後の、日曜日の演奏。さすがに2週間のラストということで、消耗してるかなというところもあるが、1曲目『Polka Dots And Moonbeams』はヴァーヴ時代と聴き比べるてみると、かなりスローになっている。水玉と月の光がはじける。やさしげな、それでいて冷ややかそうなピアノ。『Turn Out The Stars』にジーン・リース作の詩があるそうな。残念ながら私は資料として持ってないが。70年代に作られた彼のオリジナルでここまで生き残っている(演奏されている)曲ってあんまりない様に思う。ポリリズムに頼りだしたエヴァンスを"演奏力が落ちた"と見るか、"活路を見出した"と見るか。私は後者と見たい。昨日の日記にも書いた『Days Of Wine And Roses』の歌詞のその後を 寂しい夜の闇の中から、一陣の風が吹き出してくる。 酒とバラとあなたに出会った頃の、 光輝く笑顔の思い出をはらんで、 風は闇の中を吹き抜けていく。ジャック・レモンとリーレミックの映画。エヴァンスを好きになってから、この映画を見た。美しいメロディーからは想像できないような重たい映画。この曲が一番好きだとのことを言ったときに、「私はキライ」とはっきりと言い切った女性がいた。彼女も映画を知っていて、その姿を自分に重ね合わせていたのだろうか。エヴァンスの“タメ”の聴かせ方、気持ちいいところで“歌わせる”のが絶妙。ちょとサンソン・フランソワのピアノを聴きたくなって、探してみた。3人の情熱が衝突してドラマチックなパートへと変わって行くバランスが最高によい。『Emily』もラストトリオではよく演奏されているナンバー。ジョンソンはしっかりと自分の表現したいものを見つめている。手首を使いしっかりと弾いているな…音楽の表情も流れと一緒にくるくる変わり、自然にリズムを取り出す。色あざやかで表情が豊かだと感じる『I Do It For Your Love』『Minha』くるくると変わるテンポ。音楽の表情にあわせてこちらの気持ちも華やいだり沈んだり。変幻自在に様々な表情を見せる。音にシンクロする。最後は『My Romance』から『Five』へのメドレーSun,June,8,1980 First set 42.Polka Dots And Moonbeams 43.Bill's Hit Tune 44.Turn Out The Stars 45.Days Of Wine And RosesSun,June,8,1980 Second set 46.But Not For Me 47.Knit For Mary F. 48.Like Someone In Love 49.Quiet Now 50.Emily 51.I Do It For Your Love 52.NardisSun,June,8,1980 Third set 53.Knit For Mary F. 54.Like Someone In Love 55.Letter To Evan 56.Minha 57.A Sleepin' Bee 58.My Romance / Fiveエヴァンスの流れをひくピアニストは今も多く現れる。マネージャーのヘレン・キーンいわく、「彼の最大の功績は若いミュージシャンたちに、それぞれの信ずる音楽に徹底的に忠実であろうとする、その勇気を与えたことだと思う」と、語っていた。自らの信念に基づき演奏活動を行い、その信じるものを最後まで見失わずに行ってしまったエヴァンス。その崇高な精神は音楽を通してのみで実体験のない、今の世代にまで受け継がれている。"人の評価はその棺のふたが閉まってから定まる"彼の両の手が音を紡ぎだすことを止めて、もう24年。私の中では、彼の音は古く色あせてしまうことはないだろう。 相変わらず、美しいと感じるし、新しい発見もある。彼にとってはピアノは表現の手段でしかなかったのかもしれない。それ以上でも、以下でもなく。でも、そのピアノが琴線に響く夜もある。自分自身をちゃかしてしまわないと、熱いものがこみ上げてしまいそうな夜が。何の役にも立たない、そんなセンチメンタリズムのままに・・・