このブログ日記に何度か書いているが、私のマンガ歴もアニーメーション歴も非常に貧しい。それらを10歳でほぼ完全に卒業してしまったからだ。アニメーションについては日本での制作と上映史に関わっている。私が10歳だった頃といえば戦後ちょうど10年。1955年(昭和30年)だ。日本製アニーメーションは戦前戦中にわずかに制作された記録があるが、戦後の昭和30年頃はおそらく皆無。しばらくしてTV放送が本格化し、受像器が一般家庭にも普及し、「神武景気」などいわれた頃にようやくTVアニメーションが放映されるようになった。しかし、映画館用のアニメーションの時代が到来するのはまだ先のことだった。
そんな戦後事情だったから、私が小学生のときに観た劇場用アニメーションは外国製の2作品だけであった。『やぶにらみの王様』と『せむしの子馬』である。
私は自分の映画歴を綴りながら、その2作のアニメーションの日本での正確な上映記録をさがしている。あまり正確ではない個人の思い出話はみつかるのだが(*)、正確な記録というような文献は入手できないでいる。しかしインターネットの発達によって海外の情報も入手できるようになり、上記2作品についてある程度のことがわかってきた。・・・いまこうして書き始めたのも、じつは今日、YouTubeで『せむしの子馬』(**)の完全なフィルムをたいへん美しい画像で観ることができた。1947年のソヴィエト連邦制作のアニメーションだということが分かった。私にとっては65,6年ぶりの再見(再会)ということになった。
ついでに『やぶにらみの王様』をさがしてみた。アニメーション『やぶにらみの王様』についての情報は意外にたくさんあった。その作品が『やぶにらみの暴君』というタイトルの作品と同一作品であるという記録もある。そして画質はあまり良くないが動画も観ることができた。・・・しかし、現在も私の目裏にあざやかな色彩で甦る絵のスタイルが、YouTubeで観ることができる作品のスタイルとまったく異なるのである。YouTubeで観る作品はフランス製のアニメーションで、たいへんスタイリッシュな絵である。歴史的な名作と評価される由縁である。製昨年代としては私が子どもの頃に一致しなくもない。しかし、私の記憶にある絵は、もっと色鮮やかで、ややディズニー作品のようなスタイルの絵だ。
おかしなものだ。今私は、記憶とYouTube映像との絵のスタイルの不一致に、胸の中になんだか気持の悪さがある。ちがう、ちがう、これじゃない・・・そういう思いだ。1950年代に制作された別な『やぶにらみの王様』のアニメーションがあるのではないか?
私は邦画洋画いずれにしろ日本の映画上映記録がおどろくほど杜撰であることを知っている。映画評論家と称する人たちは、自分の感性と知識と教養だけで映画作品を捨取選択している。もちろん作品に対して肯定否定があっても良いと私は思う。しかし点数をつけたり星幾つだなどとやっているのは、己の能力の〈程度〉を恥ずかしげも無く公言しているようなものだ。
しかし私が言いたいのは、その対象が何であれ、記録に徹するということは大切なのだということ。文化にとって大切なことなのだ。
【*註】
手塚治虫氏がこの『せむしの子馬』に感激し、自身の『火の鳥』を創作するきっかけになったという。たしかに手塚氏の「火の鳥」のイメージは、『せむしの子馬』に登場する「火の鳥」のイメージにまるでそっくりである。
【**註】
『せむしの子馬』監督;イワン・イワノフ=ワノ、脚本;E・ポメシチコフ、原作;ピョートル・エルショフ。
以下に1947年ソヴィエト連邦制作のアニメーション『せむしの子馬』のURL。
アニメーション『せむしの子馬』