米誌「ナショナル・ジオグラフィック」が社員記者を全員解雇したという報道に驚いた。1888年9月22日に学術雑誌として創刊された。世界中に読者を持つ。本拠はワシントンDC。現在のオーナーはディズニーである。同誌は今後も継続して刊行され、記事の質は落ちないと同社広報の弁である。・・・愛読者が懸念するのは、長年記事を執筆してきた社員が全て入れ替わって、果たして科学的なまともな記事が掲載できるかどうかということだろう。
私は「ナショナル・ジオグラフィック」誌によって初めて知った事柄が少なくない。
メキシコやユカタン半島で発見される巨大な丸石についての記事は、ちょうど私が卵形象徴についの研究過程で日本の丸石信仰についても研究が進展し、海外の丸石の存在に視野を広げるきっかけとなったのが「ナショナル・ジオグラフィック」誌の記事だった。現在も資料ファイルに保存してある(下に画像掲載)。
また、ロサンゼルスに実在する「サイモン・ローディアの塔(通称ワッツ・タワー)」についても、私は早くから「ナショナル・ジオグラフィック」誌の記事とカラー写真で知っていた。のちに私はアウトサイダー・アートを研究するようになり、ワッツ・タワーを驚異の建築の事例とした。アンドレ・ブルトンが発見して世間に知らしめたフランスの郵便配達夫シュバルの驚異の城に匹敵するものである。
これらの記事が掲載されたのは1960年代半ば頃だったので、当時は英語版しかなかった。新刊は銀座のイエナ書店(2016年閉店)や日本橋の丸善で買ったり立ち読みし、神保町の古書店でバックナンバーを探したものだ。
最近では「ナショナル・ジオグラフィック」はインターネットで動画を発信している。それはそれで興味深い映像に出会うけれど、私が自分の研究資料に保存しておこうと思うと、やはり文字に書かれたものに如くはない。その記事を誰が書いたかが明確だからだ。
同社広報担当者の弁明どおり、科学雑誌として確かな記事を期待しよう。
【下は私の資料ファイルにある1967年の"National Geographic"より】