イングランド王ヘンリー8世(1491-1547: 在位1509-1547)が所持していた祈禱書に、王自身による書込みが発見された。発見者はカナダ・カールトン大学英文科のミシェリン・ホワイト准教授。祈祷書の調査中に偶然発見したという。CNNのジャック・ガイ氏が報じている。
英ヘンリー8世の祈祷書に書込み発見
ヘンリー8世はもともとカトリック教徒であったが、教会によって不適とされたアン・ブーリンと結婚をするために、カトリックから国教教会を分離させた。アン・ブーリンは2番目の王妃である。後のエリザベス1世の母である。ヘンリー8世は6度の結婚をした。当初は世継ぎとしての男子の出生を望んだためであったが、息子エドワード6世の誕生後も次々と結婚を繰り返した。晩年の王は、好色、利己的、無慈悲であり、またパラノイアだったとされる。
このたびの問題の祈祷書は、最後の王妃となったキャサリン・パーがラテン語から英語に翻訳して王に贈ったもので、4っつの詩篇から成り、1554年に印刷された。中に14箇所の王の書込みがあるという。書き込みと言っても文字ではなく、「指差しマーク(manicure)」と「三つ葉模様(trefoil)」である。
発見者のミシェリン・ホワイト准教授によれば、王が書込みしたその部分の詞句から王の不安や苦悩を窺い知れるという。
上掲のCNNニュースにある祈祷書の画像の指差しマークの部分を読んでみる。古英語なので現代英語とはスペルが異なりラテン語も混じっているようなので、私の読み違いがあるかもしれない。
【原文】
Take away thy plages from me: for thy punithement hache made me bothe fable and faynt.
【現代語】
Take away your plagues from me: for your punishment have made me both week and faint.
【日本語訳】
あなたの懲罰(伝染病)を私から遠ざけてください。あなたの懲罰は私を弱々しく気抜けにしてしまいました。
この王の書込みは、ヘンリー8世についての一般的なイメージの変更を迫っているのかもしれない。興味深い発見である。
(追記)思い出したので書いておく。もう60年近い昔、ヘンリー8世が着用していた甲冑の正確な複製を英国が貸し出し、日本橋・三越の「英国展」で展示された。私はそれを見ている。背丈、体格、並外れて大きな人だと思った。