我が家の小庭の楮(コウゾ)の実。
楮はクワ科の樹木。したがって桑の実のような小さな果実が生る。我が家の庭にあるにもかかわらず、私は楮の実は食べてみたことはない。桑の実は、長野県の川上第二小学校の小学1年生のころ、学校帰りに、秋山と梓山のちょうど境になる坂の頂上、梓山に降る右手の山の桑畑に道草して、同級生のタカネちゃんやナナコさんと口を真っ黒にして食べたものだ。お互いの顔をみて大笑いしながら。
三木露風作詞の童謡『赤とんぼ』に、「山の畑のクワの実を 小籠に摘んだは いつの日か」
・・・じつは近年、弟が吟行の途中で農家の方にもらったと、桑の実を私におすそわけしてくれた。小学1年生以来の野生の味を楽しんだ。
小庭の楮は、例のごとく、植えた憶えのない木である。年々大きくなるが、通路にはみ出した枝を折ると、楮の特徴である強い繊維質の皮のため細枝にもかかわらず幹から素手では切り離せない。和紙の原料となる所以である。大江健三郎氏の御生家はこの楮の皮を造幣局に納入する元締だったとか。