午前中に電動自転車で3時間ほどの外出をした。帰りの山登りの急坂道を電動自転車ながらペタルを漕いで登ってこれる力はある。そこまでは良いのだが、午後になってやはり疲れがでたのか眠気が差してきた。ベッドに横になって、ひさしぶりにヘミングウェーの短編『Old Man at the Bridge』を読み、つづいて『Up in Michigan』を読んでいるうちに、本を胸の上におとして眠っていた。昼寝などほとんどしないのに、歳は争えないと思った。このブログ日記でも事あるごとに79歳だと書いていて、私はもう随分以前から「老人」を自称してきた。じつのところ肉体的に「老衰」したとは思っていないのだが、容貌の「老人」は肉体の内部にもちゃんと現れているのである。
ところで、浪曲師で演歌歌手の二葉百合子氏は、御年93歳だそうだ。私はたまたま二葉百合子氏が昨年92歳のときにTV出演されて『岸壁の母』をセリフ入りで全曲歌われたのを、YouTubeで聴いた。いや、驚きました。真の芸道者とはこういうものかと、そのまったく衰えのない歌声、張り、明瞭な言葉・・・その迫力に、私は涙が滲んだ。私の見聞したリストには、たくさんの「本物」がある(いる)。私はそれらの人たちだけを心中に見つめてきた。その人生。その生き方。その思想。その死に際のあり方。その死に様。・・・そして、「老い」をものともしない本物だけに備わった「精進」の証を、二葉百合子氏に見た。
二葉百合子氏92歳の『岸壁の母』