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テーマ:洋楽(3357)
だが、僕がアルバムの1曲目にあたる「I Love The Lord; He Heard My Cry, Pts. 1 & 2」を初めて聴いた時には 「…………何コレ?」 と思ってしまった。 45人編成のオーケストラによる、クラシックそのものといっていい演奏(しかもインスト)が延々と続くのだ。 おいおい、これのどこがソウルの名盤やねん、と。 しかし、二曲目の「Someday We'll All Be Free」へとつながる瞬間のスリルを体感した時、なんとなく納得してしまった。 うーむ、1曲目はかなり壮大なイントロだったのかと。 当時のソウル・ミュージックとしてはかなり斬新な発想。 大学時代にクラシックを学んだというダニーらしいアイデアですね。 '45年シカゴ生まれのダニーは、有名なゴスペル・シンガーだったという祖母を持ち、子供の頃から音楽に親しんで育った。 そんな彼がアーティストとして世に出るのは'70年(もともとは裏方だった)。『新しきソウルの光と道』なるアルバムをひっさげてデビューした彼は、大型新人として紹介されたという。 彼の音楽性は文字通り"ニュー・ソウル"と呼ばれ、同時期のマーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドと共に大きな注目を集めた。 '72年のライヴ・アルバム『Live』は、名盤ガイドブックの常連として広く知られているだろう。 同年発表のロバータ・フラックとのデュエット・アルバムはポップ・チャートでも大ヒットを記録した。 そして、先述のアルバム『Extension Of A Man』である。 「愛と自由を求めて」という邦題のついたこの作品は、ダニーにとって三枚目のオリジナル・アルバムだ。 プロデュースを手掛けたのは名匠アリフ・マーディン。アレンジ面ではダニー自身も大きく関わっているようだ。 「I Know It's You」はアルバムの十曲目(オリジナル盤では最後)にあたる、スケールの大きなソウル・バラードである。 作者は、マーヴィン・ゲイの「I Want You」でも知られるリオン・ウェアだ。 ここでは楽曲のよさもさることながら、ゴスペル、ジャズ、クラシックという音楽要素をダニー流に昇華した入魂の仕上がりとなっている。 ジャジーで繊細なピアノ、甘くはかない響きを持ったストリングス、そして濃密にしてエモーショナルなダニーの歌声が胸を打つ。 特に、女性コーラスと共に盛り上がるサビ部分は圧巻。 なんと哀しくて美しい音楽か。 黒人音楽にウトい自分でも聴くたびに体がふるえる思いだ。 だが、これほど素晴らしい作品を作りながらも、ダニーは以降、創作活動をストップしてしまう。これはソウル史における大きな損失だった。 その五年後にあたる'78年、ふたたびロバータ・フラックとデュエットした「The Closer I Get To You(愛は面影の中に)」が全米2位のヒットを記録する。 ようやくアーティストとして復帰したと思われたダニーだったが、なんとその矢先となる'79年1月、彼はニューヨークで飛び降り自殺してしまう。33年という短い生涯だった。 音楽的行き詰まりか、プライベートの悩みか。晩年の彼は、いつ自殺してもおかしくない状態に見えたという。 愛と自由を求めたダニーという人は繊細でマジメすぎたんだろうな。。。 フマジメな凡人のワタシは、彼の音楽を聴くたびにそう思うのでした。 アルバム『Extension Of A Man』は他にも素晴らしい曲がぎゅう詰めの一枚。 先述の『Live』と並んで必聴の名盤です。 くわしくはここを参照してくださいな。 つーコトで「I Know It's You」を聴くにはここをクリック! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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